立冬到来――肺と腎が弱る冬に、白菜が助ける五臓ケア
立冬:金が退き、水が生まれ、寒水が主る季節
11月7日は立冬。ここから本格的に冬の季節へと入ります。冬が寒いのは、五行の理でいえば「金の気」が退き、「水の気」がその役目を引き継ぎ、天地の主気が「寒水」となるからです。
この寒気は腎を傷めやすく、腰の痛みや頻尿などを起こしやすくします。また、五行では「水は火を制す」とされ、心は火に属して血脈を司ります。そのため、心の火が弱まると気血の流れが滞り、血行が悪くなり、心臓や脳の不調を招きやすくなるのです。
したがって、立冬以降の養生では「脾と腎を温め、陽気を内に蓄える」ことが何より大切です。
乙巳年、肝と肺の気が乱れ 肺の弱りと腎の冷えに注意
今年(2025年)は乙巳の年です。『黄帝内経』によると、この年は自然界の「金の気」が不足しやすいとされています。
金は五行で「肺」を司るため、金気が弱まると肺の働きも低下します。一方で木の気が相対的に強まり、風の勢いが増して「肝の気が肺を乱す」という現象が起こりやすくなります。
これが五行の不均衡、すなわち臓腑の調和が崩れる原因です。
肺は全身の「気」を司る臓器です。その肺の気が不足すると、脾胃の働きにも影響が及び、食欲不振や消化不良、気血の生成不足を招きます。
また、五行では「金は水を生む」とされ、水は腎に属します。したがって、金(肺)が弱まると水(腎)の気も満ちず、腎の陽気を十分に蓄えることができず、腰の冷え、膝のだるさ、頻尿といった症状が出やすくなります。
さらに、寒水が火を制するため、火に属する「心(しん)」の気も抑えられ、血のめぐりが悪くなって、動悸や胸のつかえ、手足の冷えといった不調が現れやすくなります。
したがって、この冬の養生の要は、「肺を補い、肝をやわらげ、脾を温め、腎を養うこと」にあります。
五行の気の流れを整えれば、金(肺)が充実して肝の気が和らぎ、金が強まれば腎水が生まれ、水が温まれば心火が和し、こうして臓腑の陰陽が調い、心身が穏やかに保たれるのです。
レシピ:酸菜(または白菜)と豚肉の春雨煮込み
五臓の調和をととのえる一品
中国東北地方では、厳しい冬の寒さを乗り切るために、酸菜(発酵白菜)や豚肉、あるいはスペアリブを春雨と一緒に煮込む料理がよく食べられます。この料理は酸味のある香りが食欲を促し、肝の働きを整えるとともに、体を温め、寒さを散らし、脾を健やかに保つ働きがあります。
まさに「肺を補い、肝をやわらげ、脾を温め、腎を養う」立冬以降の養生法にかなった料理です。
日本の食材で作る場合は、酸菜の代わりに白菜を使い、生姜と酢を加えて仕上げれば、やさしい酸味と温かみを兼ね備えた和風の一品として楽しめます。
材料(4人分)
- 豚バラ肉(またはスペアリブ)……400g
- 白菜……300g(または東北の酸菜でも可)
- 春雨(またはさつまいも春雨)……80g
- 生姜……5枚(脾や腎が冷えやすい人は少し多めに)
- にんにく……2片
- 穀物酢(米酢またはりんご酢など、天然醸造のもの)……大さじ2
- 味噌……大さじ1
- 醤油……大さじ1
- 塩……少々
- 水または出汁……約800ml
- ごま油……小さじ1
作り方
- 下ゆでする(臭みを取る)
・豚肉は食べやすい大きさに切り、鍋に水と生姜を入れて火にかける。
・沸騰したらアクを取り、肉を取り出して水気を切る。
- 香りを出す
・鍋にごま油を熱し、生姜とにんにくを炒めて香りを出す。
・豚肉を加えて表面に軽く焼き色をつける。
- 白菜と調味料を加える
・白菜を加え(酸菜を使う場合は軽く水洗いして酸味を和らげる)、味噌醤油・穀物酢を加えて全体をよく混ぜる。
- 煮込む
・水または出汁を加えて沸騰させ、弱火で約40分ほど煮る。
・肉が柔らかくなり、スープに旨味が出てきたら次へ。
- 春雨を加える
・戻した春雨を入れ、弱火で煮て味を染み込ませる。
・仕上げに塩で味を調えれば完成。
養生のポイント
- 白菜:五行で「金」に属し、肺を潤して陰を養う働きがあります。酸味は「肝」に入り、肝の気をやわらげるため、肝と肺のバランスをととのえるのに適しています。
- 豚肉:腎に入り、水分と陰を補い、そこに生姜の温かい力を加えることで、体を温めながらも乾かさず、腎を温めて元気を養う作用があります。
- 春雨:性質が穏やかで、肉の脂を和らげ、脾胃の消化を助けます。
熱々のスープが体の中心を温め、寒さを払い、肝・肺・脾・腎の気を調和させて気血のめぐりがなめらかになり、五臓の働きと五行のバランスが調和して、心身が自然のリズムへと整っていきます。