「バイユーのタペストリー、場面57:ヘイスティングズの戦いでのハロルド王の死」。1070年代に刺繍されたこのタペストリーには、ヨーロッパで最も初期の騎士たちの姿が描かれています。(パブリックドメイン)

剣に誓い、神に捧ぐ――騎士叙任式の象徴と思想

夜が静まり返る深い闇の中、祭壇と聖像の前で、揺れるろうそくの灯が冷たい石床に影を落とす中、一人の男がひざまずいています。祭壇には彼の武器が置かれており、それは「これらは神に属するものであり、正義・真理・名誉を守るために使われなければならない」という象徴でした。従者(スクワイア)は暗い夜の間じゅう、神に自らの心を捧げ、騎士としての使命を果たすために必要な力を求めて祈り続けます。やがて夜明けの赤い光が空を切り裂くころ、従者は騎士へと変わる瞬間が近いことを悟ります。

中世ヨーロッパ社会で騎士が生み出される際の精巧な儀式は、「戦士」に託された高い理想を反映していました。もちろん、騎士が常にその理想を体現していたわけではありません。しかしこれらの儀式は、中世の世界観や、その中で紳士・戦士が担う役割について多くを物語っています。

 

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