黒こしょうの肉煮込み 腰と足の冷え、夜間頻尿が気になる方に
冬の夜に腰が冷える、夜中に何度もトイレに行く、足先が冷えて眠れない―これらは、体を温める力が不足している「腎の冷え」の典型的なサインです。すりつぶしていない粒のままの黒こしょうは、腎を温め、体の内側から力を補う食養生の名脇役です。黒い色は五行では「水」に属し、腎と関わりがあります。辛みと温かさを持ちながら、その作用は外に広がらず、下へと静かに届きます。肉と一緒にじっくり煮込むことで、その温かさが腰や腎の奥まで届き、弱った腎の力をしっかり支えてくれます。
腎が冷えると、なぜ夜尿や足の冷えが起こるのか
冬は一日の中でいえば夜にあたります。太陽が沈むと、自然界の陽の気は地中に潜り、同じように人の体の陽の気も体の奥へと引き戻されます。この時期、体のエネルギーは中から下の部分、特に腎に集まり、休息や睡眠の準備に入るのが本来の姿です。
ところが、腎の温める力が弱いと、たとえば火力の弱いストーブのような状態になり、まず腰や脚が冷えてきます。膀胱は、本来、体の温かさの力を使って水分を処理しますが、その力が足りないと、尿をためられず、夜中に何度もトイレに行くことになります。この冷えは下へ下へと向かう性質があるため、腰から脚、足先まで冷えを感じ、眠りにくくなってしまうのです。
改善するには、ただ温かい飲み物を飲んだり、服や布団を重ねたりするだけでは不十分で、体の下半分、特に腎のあたりにしっかり温かさを届けることが必要です。
黒こしょうは砕かず、必ず粒のままで使う
黒こしょうが特別なのは、その色と働き方にあります。黒色は腎と関係が深く、黒こしょうの温める力は下へと向かい、腎に届きやすい性質があります。粒のまま長時間煮込むことで、辛みがゆっくりと溶け出し、生姜のように汗をかかせて体表に作用することはありません。その温かさは静かに下半身へ沈み、腎の中の火をそっと灯し、補ってくれます。
ここで最も大切なのは、黒こしょうを砕かないことです。砕いてしまうと辛みが一気に広がり、体の表面や呼吸器のほうへ作用してしまい、汗をかかせて体の温かさを外に逃がしてしまいます。腎を温めたい場合は、必ず粒のまま使いましょう。コクのある肉と合わせることで、滋養の力がさらに下へ引き込まれ、腰や脚まで温かさが届きやすくなり、腰の冷えや足の冷え、夜尿の改善につながります。
じっくり煮込んだ肉の力で、温かさを下半身へ
肉の煮込みは弱火で時間をかける調理法です。煮込む時間が長いほど、肉のコクが体の奥に届き、黒こしょうの温める力をしっかりと下半身へ運んでくれます。豚すね肉や牛すね肉、スペアリブのように歯ごたえのある肉は、うま味が深く、煮汁も濃厚になり、温かさが体表に逃げにくいのが特徴です。にんじんの自然な甘みは、味を整えるだけでなく、温める作用をやさしくし、体をほてらせすぎず、心地よく温めてくれます。
レシピ:黒こしょうとにんじんの肉煮込み
材料(4人分)
- 豚すね肉 …… 500g(牛すね肉やスペアリブでも可)
- にんじん …… 2本(大きめに切る)
- 黒こしょう(粒)…… 12~18粒
※胃腸が冷えやすく、腰や足の冷えが強い人はやや多めでも可 - 生姜 …… 3枚(臭み取り用。発汗を強めない量)
- 塩 …… 適量
- 水 …… 1200~1500ml
作り方
- 肉を食べやすい大きさに切り、下ゆでしてアクを取ります。
- 鍋に肉、にんじん、粒のままの黒こしょう、生姜を入れ、水を加えます。
- 強火で沸騰させた後、弱火にして1.5~2時間、じっくり煮込みます。
- 肉がやわらかく味がなじんだら、塩で味を調えて完成です。
期待できる働きと注意点
粒のままの黒こしょうは、温かさを逃がさず腰や腎に届けます。肉の深いコクがその温かさを下へ導き、にんじんが全体を調和させることで、体を温めながらも刺激が強すぎない仕上がりになります。続けて食べることで、腰の冷え、夜間の頻尿、足先の冷えといった腎の冷えによる不調を和らげ、冬を快適に過ごしやすくなります。
ただし、体に熱がこもりやすい人、のぼせやすい人、炎症がある人、胃腸にトラブルがある場合は、黒こしょうを使った料理は控えてください。体をさらに熱してしまったり、消化器官を刺激したりする恐れがあります。