カウボーイのシルエット(Shutterstock)

男たちが今も背負い続ける 言葉なき覚悟

今週初め、ハーベスト・ホスト(農場宿泊サービス) の宿泊客の一人がレストランに入ってきて、土地の外れで牛が穴に落ちて動けなくなっていると教えてくれた。

その種の一言は、その場の空気を一変させる。夫が無線で私を呼び、数分もしないうちに、宿泊客、農場の作業員、弟、子どもたち、みんなが問題の場所へ向かった。一頭の牛が穴に落ちていた。どれくらいそこにいたのかは分からない。最後にその牛が立っている姿が確認されたのは午後1時頃で、私たちがそこに着いたのは午後6時だった。牛は何時間ももがき続けていたのだ。

ボブキャット(小型の土砂運搬車)とバックホー(掘削機)を投入して、ようやく彼女を救い出した。大きな切り株を動かし、瓦礫を取り除き、穴を広げた。その穴は、牛一頭が入り込めるとは思えないほど小さく見えた。だがそれは一種の錯覚であり、その場に立って、彼女がいた場所を見下ろして初めて理解できるような、遠近法のいたずらだった。

▶ 続きを読む
関連記事
気候訴訟を起こす牧場主らに対し、現代文明と農業を支える石油の恩恵を自覚すべきだと説く論考。人間を地球の害悪とみなす風潮や過度な脱炭素論に異を唱え、環境再生の主体としての農と人の役割を問い直す
ダーウィンの進化論がいかにして生命の神聖さを否定し、現代における人工妊娠中絶の容認や優生思想へとつながっていったのかを論考。唯物論的価値観が生命の尊厳を破壊してきた歴史的・倫理的背景に鋭く切り込む
組織文化の崩壊を招く真因は制度の不備ではなく指導者の行動にある。形骸化した理念や表面的な対話を排し、自らの姿勢を正す勇気を持てるか。30年の経営実績を持つ著者が問うリーダーシップの本質
政治的分断が食の世界にまで及ぶ現代アメリカ。投票先ではなく農法や土壌の再生で生産者を評価すべきだと訴え、健全な土壌のように多様性を認め合い「隣人」として手を取り合う重要性を説くオピニオン記事
ガザ地区の惨状をめぐりイスラエルに向けられる「ジェノサイド」批判の虚構を、歴史的経緯と人口動態、ハマスの戦略から米歴史学者が鋭く論破。2005年の完全撤退以降の事実から、事態の本質と深層を浮き彫りにする