高コレステロールは本当に悪いのか? リスクは人によって変わる

高コレステロールと言われると、まるで判決を受けたように感じるかもしれません。「スタチンを飲み始めないと、心臓発作や脳卒中のリスクがある」と。

しかし、最近の研究では、高コレステロールが一律に有害であるわけではないことが示唆されています。一方、ソーシャルメディアでは逆に極端な主張が広がり、「高コレステロールが命を救うかもしれない」「高コレステロールが100歳以上の長寿の秘訣だ」といった声も聞かれます。

では、高コレステロールは本当に「良い」のか「悪い」のか?

現実は、どちらの極端な見方よりも複雑です。より有用な問いは、「高コレステロールが有害かどうか」ではなく、「いつ、誰にとってリスクになるか」です。
 

「脂質パラドックス」

ソーシャルメディアの健康インフルエンサーの一部は、コレステロールのイメージを逆転させ、積極的な治療で下げなければならないものではなく、長寿の鍵であると主張しています。

このインターネット上の議論の多くは、実際の研究に基づいています。2023年のスウェーデン研究では、高齢者を35年間追跡した結果、総コレステロール値が高い人の方が100歳まで生きる可能性が高いことが分かりました。また、別の2025年の研究では、90歳以上の成人でLDL-C(悪玉コレステロール)が130mg/dLを超える人の方が、それ以下の人よりも長生きしていたことが示されました。これは、アメリカ心臓協会が最適なLDL-Cレベルを100mg/dL以下と推奨していることを考えると、注目すべき結果です。

しかし、2023年に1800万人以上の退役軍人(18歳以上)のデータを分析した研究では、重要な注意点が示されました。高齢者でコレステロール値が低い人に冠動脈心疾患による死亡率が高いのは、研究者が「逆因果関係」と呼ぶ現象によるものでした。つまり、データ上はAがBを引き起こすように見えても、実際にはBがAを引き起こしているということです。深刻な基礎疾患がコレステロール値を下げている可能性が高いということです。

研究者たちはこれを、コレステロール(または脂質)の「パラドックス」と呼びました。LDL-Cや総コレステロール値が低いと、研究で意外にも健康状態が悪いという逆説的な観察結果です。

「現在の『脂質パラドックス』仮説で私が懸念するのは、高齢者(特に80歳以上)で非常に低いコレステロール値は、がんなどの基礎慢性疾患のマーカーであることが多いという点です」と、ミシガン大学の元医療担当副学長で心臓専門医のマーシャル・ランゲ医師はエポックタイムズに語りました。「脂質パラドックスを支持する報告された研究では、これらの変数を考慮していません」

「簡単に言えば、低コレステロールは基礎疾患、虚弱、栄養不良、または慢性疾患を反映していることが多く、これらが独立して死亡リスクを高めます」と、アトランタの心臓専門医エディ・ハックラー医師はエポックタイムズに語りました。つまり、高齢者でコレステロール値が高いということは、病気がない、または栄養状態が良いことを意味し、これらの要因が独立して死亡リスクを低下させる可能性があります。これが、研究で高齢者の高コレステロールと長寿の関連が見られた理由を説明できるでしょう。

しかし、一般集団では高コレステロールが心臓病のリスクを高めるという証拠を否定する根拠はないと、ランゲ医師は指摘します。「ほとんどの成人(若年層から中年層)にとって、高LDLコレステロールは動脈硬化性心血管疾患の主要な要因であり、LDLコレステロールを低下させることは命を救う可能性があります」
 

コレステロール神話を疑問視する

コレステロールをめぐる議論は、科学だけではありません。歴史も大きく関わっています。

コレステロールが食事の「悪役」となったのは1953年、生理学者アンセル・キーズが脂質心臓仮説を提唱したときです。高脂肪、飽和脂肪酸、食事性コレステロールの摂取が多いと、動脈硬化を引き起こすという考えです。キーズは、脂肪とコレステロールを減らし、動物性食品の飽和脂肪酸を植物油や脂肪魚の多価不飽和脂肪酸に置き換えることで、コレステロールを下げ、心臓病のリスクを低減できると主張しました。

これにより、1968年にアメリカ心臓協会は1日あたりの食事性コレステロールを300mg未満に抑え、コレステロールの主要な供給源である全卵を週に3個以内に制限するよう推奨しました。

しかし、その後の研究でこの見方は複雑になりました。高コレステロールが心臓病のリスクを高めることは事実ですが、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置き換えても心臓病による死亡率が低下しないどころか、場合によっては上昇するという臨床研究もありました。

また、ほとんどの人にとって、食事からコレステロール(例:卵)を摂取しても血中コレステロール値は大きく上昇せず、心臓病リスクにも大きな影響を与えないことが研究で示されています。

コレステロール対策における製薬業界の関与への懸念も、懐疑論を引き起こしています。コレステロール低下薬であるスタチンは1990年代後半に主流となり、巨大市場となりました。2022年の報告によると、世界のスタチン市場は2027年までに152億ドルに達すると予想されています。

スタチンは通常、LDLが190mg/dL以上、または糖尿病や心血管リスクが高い人で70〜189mg/dLの人に使われます。しかし、副作用もあるため、すべての患者で利益がリスクを上回るかどうかという疑問が生じています。
 

コレステロールの体内での役割

悪名高いイメージとは裏腹に、コレステロールは本来有害なものではなく、健康と活力に不可欠です。

ランゲ医師によると、コレステロールはすべての細胞の構造成分であり、細胞膜の完全性を保つのに役立ちます。また、脳機能にも重要です。「脳には全身のコレステロールの約25%が含まれており、シナプスの形成と神経信号の伝達に不可欠です」

コレステロールは、コルチゾール、アルドステロン、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロンなど、すべてのステロイドホルモンの材料でもあります。日光浴によってビタミンDを生成する助けとなり、肝臓が胆汁酸を作るのに必要で、脂肪の消化や脂溶性ビタミン(A、D、E、K)の吸収にも不可欠です。「極端に低いコレステロール値で生まれた人は、さまざまな深刻な障害を抱える可能性があると言えます」とランゲ医師は述べています。

コレステロールには利点がある一方で、高コレステロールは静脈や動脈にプラークの蓄積を引き起こす可能性があります。しかし、「コレステロールが排水管の油のように動脈を詰まらせる」というのは一般的な誤解です。実際には、高コレステロールが動脈壁の炎症を刺激し、プラーク形成につながると、彼は指摘します。

動脈壁にすでに存在する炎症や損傷も、プラーク蓄積の要因となります。

コレステロールを運ぶLDL粒子は血液中を循環します。粒子が多すぎる場合、または喫煙、高血圧などの要因で動脈壁が損傷している場合、LDL粒子が動脈内膜に侵入して留まると、ランゲ医師は説明します。留まったLDL粒子は酸化という化学反応を起こし、免疫反応を引き起こします。

体は酸化したLDL粒子を異物と認識します。免疫系はマクロファージ(白血球)を送り、粒子を「食べる」ようにします。「マクロファージはコレステロールを貪り食い、脂肪で満たされた『泡沫細胞』になります。これらの泡沫細胞が死んで蓄積し、脂肪線条を形成します。平滑筋細胞が移動してこの線条を覆い、線維性被膜を形成します。この蓄積がプラークです」とランゲ医師は言います。

プラークが蓄積すると動脈が狭くなり、血流が減少または遮断され、脳卒中や心臓発作を引き起こす可能性があります。プラークが不安定になって破裂すると、血栓ができて動脈を塞ぎ、心臓発作や脳卒中を起こすことがあります。

研究では、スタチンがコレステロールを低下させるだけでなく、炎症を抑えることで心臓病リスクを下げ、プラーク形成を抑制する可能性があることが示されています。
 

特にリスクが高い人

高コレステロールは誰にとっても心臓病の要因になり得ますが、ランゲ医師は特定の健康状態にある人は、特にLDL-CとアポリポプロテインB(有害なコレステロール粒子の主成分で、動脈にプラークを蓄積させる)のコントロールに注意すべきだと指摘します。

すでに心臓発作や脳卒中を起こした人、末梢動脈疾患と診断された人にとっては、高コレステロールのリスクが高くなります。また、1型または2型糖尿病、高血圧のある人も注意が必要です。これらの疾患は血管や動脈内膜を損傷し、プラークができやすくなります。

さらに、慢性腎臓病は特有の脂質異常を引き起こし、心血管リスクを高めます。

遺伝性高コレステロール血症は、遺伝子変異により極端に高いLDLコレステロールを引き起こす疾患で、心臓病や心臓病関連死亡の重要なリスク因子です。この患者は、動脈損傷が進む前に、早期からコレステロール低下治療を開始すべきです。

高リポプロテイン(a)(遺伝的なコレステロールの一種)を持つ人も、心臓病のリスクが高いグループです。特に、総コレステロール値も高い場合は注意が必要です。

10年間の動脈硬化性心血管疾患リスクスコアが高いことも重要な因子だと、ハックラー医師は言います。医師はアメリカ心臓協会のPREVENT計算ツールなどで、個人の10年および30年リスクを算出できます。

自己免疫疾患のある人は、一般的に心臓病のリスクが高く、高コレステロールはそのリスクをさらに高めます。例えば、ループス患者はそうでない人に比べて、心臓病のリスクが50%高いとされています。これは、疾患に伴う慢性炎症、動脈内のプラーク蓄積の加速、血管内膜の損傷、特定の抗体によるものだと研究で示されています。

喫煙もリスクを高めます。タバコの煙に含まれる化学物質は善玉のHDLコレステロールを低下させ、血管内膜を損傷してプラークの蓄積を引き起こすと、ランゲ医師は指摘します。

コレステロール関連のリスクは人によって大きく異なるため、医療の推奨も進化し続けています。変わらないのは、自分の数値(高くても低くても)に注意を払い、それを生活習慣と心臓の健康について率直に話し合う出発点にすることです。

(翻訳編集 日比野真吾)