【大紀元日本11月2日】中国で2000年以上の歴史を持つ「端午の節句」(旧暦5月5日)が昨年、韓国によって「江陵(カンルン)端午祭」という名前でユネスコの「世界無形文化遺産」に申請され、正式に認定された。韓国では更に、中国の伝統医学である「漢方(中医学)」を「韓医学」と名前を改め、世界文化遺産の認定申請の動きが出ているという。専門家は、もし中国が伝統文化を重視しなければ、それらは全て外国に取られてしまうと警戒感を強めている。
中国問題専門家である北京理工大学の胡星闘教授は、大紀元の取材で次のように述べた。「中国周辺の国々は、中国より中国伝統文化を保護しており、それが却って中国に伝統文化を大切にするよう促すことになるかもしれない。伝統文化を切り捨てれば、中国人は精神の源を失ってしまう。伝統文化の精髄を発揚すれば、人類社会の道徳の建て直しや、世界文明の向上及び各種の社会問題を解決できるだろう」。
胡星闘教授は、北京大学資源学院国際企業管理研究所の副理事長、副所長、平和の使者を兼任し、政府経済学、発展経済学を研究している。以下は胡星闘教授の取材内容。
韓流ブームには深い伝統文化の背景がある(AFP/Getty Images)
「中国文化は中国にない」
中国の伝統文化は、日本、韓国、シンガポール、台湾などの周辺地域に強い影響を与えてきた。伝統医学、歌劇、舞踊、衣装、飲食、季節の行事、氏名、信仰など多方面にわたり、互いに共通する部分が多い。特に、儒家思想は周辺国家で大きく発展した。
近代になり、それらの周辺国家は、中国よりも中国の伝統文化を保護していると言えるだろう。以前、私は、敦煌は中国にあるが、敦煌に関する学問の研究は国外にあると言ったことがある。今、中国人の大多数は中国にいるが、中国文化は中国にないと言えるかもしれない。
たとえば、唐の文化を最もよく保存している国は日本であり、漢王朝の文化を最もよく保存している国は韓国である。現在の中国大陸の文化は、何の文化にも似ていない「変てこなもの」である。近代以来、中国は西洋化に進んできた。たとえば、マルクス主義に対する盲目的な追従もそうである。「文化大革命」以来、中国は全面的に伝統文化を破壊してしまった。今では、本当の伝統文化はほとんど残っていない。一部の中国人の言行に、いくらかの中国の伝統倫理と道徳が残されているが、文化の精髄は保護されず、全面的に失ってしまった。
韓国の世界遺産の申請は、中国人に対する大きな打撃である。世界が伝統文化を保護する中で、中国も影響を受けて、自国の伝統文化を大切にするようになるかもしれない。
文化大革命時、孔子の像を壊す紅衛兵 (大紀元)
伝統文化を大切にする韓国
韓国は伝統文化を大切にしているからこそ、無形文化遺産を申請しているのだ。韓国の国旗は陰陽と八卦の図案で構成されたものであり、中華民族の文化を反映している。この図案は、老子の陰陽共存、陰陽転化の哲学思想を表しており、宇宙の平衡と調和を表現し、中国人の求めている円満、円融の精神世界を象徴している。しかし、現在の中国人はほとんどこれを知らない。
韓国や日本などでは、街の至るところに中国の文化が溢れており、中国文化は深く人々の心に染み込んでいる。彼らは孔子、王陽明、朱熹などの中国古代の賢人を尊重し、その程度は、時に中国人以上である。韓国で行われる孔子の記念式典は、中国人のものより、もっと厳かで伝統的だ。
最近人気の韓国ドラマは、人徳を重視し、師を尊敬し、道(どう)に従い、年寄りを大事にし、幼い子供を愛し、男は逞しく女は優しく、勤勉で苦に負けず、根気よく努力する伝統文化の倫理道徳を反映しており、多くの人々の共感を得ている。中国で失われた伝統文化は、再び外国で注目を浴び、これによって、中国人が久しく忘れていた伝統文化の記憶が呼び戻されている。
2006年9月25日、韓国の伝統舞踊団が行なった孔子の誕生を記念する式典。(JUNG YEON-JE/AFP/Getty Images)
「中国は伝統文化を重視すべき」
中国伝承の多くの伝統文化や技術は、外国の文化遺産として登録された。常識から考えれば、中国に属すべきものであっても、形式上、その文化は登録した国のものになってしまう。
これは中国に対するひとつの啓示だ。わが国も伝統文化の保護に力を入れるべきである。中国は近年、一方的に経済のみを発展させ、物質の豊かさを強調し、精神文化をまったく顧みてこなかった。その結果、多くの社会問題が噴出している。
中国は伝統文化の継承と保護を重視すべきであり、私達は伝統を切り離すことができない。もし伝統がなければ、中国社会は空虚な世界になり、中国人は精神の源を失ってしまう。
伝統文化の精髄を発揚することは、人類社会の道徳の回復に役立ち、世界文明のレベルの向上に寄与し、道徳の滑落、信仰の危機、人権意識の欠如、倫理の堕落、環境の危機、テロリズム横行、犯罪多発などの世界的な問題解決に貢献するだろう。また、良好な教育と高尚な道徳が存在する人間社会を生み出すのに役立つだろう。
孔子の誕生日を「世界教育の日」に
私は去年11月、国連事務総長とユネスコの事務局長に手紙を送り、孔子の誕生日である9月28日を「世界教育の日」と認定するよう提案した。私は、かつて中国政府にこの提案を出したことがあるが、実行するのは、かなり難しい。文化大革命の影響で、国内では孔子に対する評価がまだ議論されているからだ。国連が「世界教育の日」を認定し、国際社会に受け入れられる方が、むしろ可能性が高い。多くの国では、孔子は尊重され、偉大な思想家、教育家として広く知られているからだ。
孔子は、公平な教育と民間教育の提唱者であった。彼の教育思想である道徳、信用、人格、修身、言論規範、仁・義・礼・智・信、および謙遜、寛容、自律の理念は、人々の人生の指針としても大事なものである。
もし国連が「世界教育の日」を設定し、孔子を記念することができれば、世界各国に大きな影響を与えることができる。これは、世界における教育の振興、道徳や正統文化の再生において大いに役立つだろう。
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