神は、誰かにより多くの愛を与えたりはしない
【大紀元日本4月20日】ローマからサン・マリノへ行く途中、神に対する、考えさせられる話を聞いた。
ヨーロッパのある国に、有名なソプラノ歌手がいた。彼女はまだ30歳の若さだったが、すでにその才能が認められ、世界中で活躍していた。彼女は素敵な夫と子供にも恵まれていた。彼女が海外コンサートを開けば、そのチケットはすぐに完売し、いつも大成功だった。ある日、彼女がコンサートを終えて夫と息子とともに会場を出ると、外で待っていたファンが彼女を拍手で迎えた。
ファンたちは、感激と尊敬の眼差しでソプラノ歌手を誉め称えた。ある者は、彼女が大学を出て、すぐにナショナル・オペラハウスのリード歌手となったことを誉めた。ある者は、彼女が25歳の時に、世界のソプラノ歌手トップ・テンに選ばれたことを誉めた。ある者は、彼女の夫が大会社の社長であり、息子もいつもニコニコしていて良い子であり、とても恵まれていると褒め称えた。
大勢の人が口々に褒め称えている時、ソプラノ歌手は何も言わず、ただじっと聞いていた。人々のざわめきが落ち着くと、彼女はゆっくりと話し出した。「皆さん、私と私の家族のことを誉めてくださって、ありがとう。私も、それを心から喜びたいところです。しかし、皆さんは、ただ一つの角度しか見ておらず、他の部分を見落としています。実は、いつも笑顔の私の息子は、生まれつき口がきけません。私にはもう一人娘がいますが、精神分裂症を患っていて、病院を出ることができません。」
ソプラノ歌手の告白に、ファンたちは言葉を失った。彼らは顔を見合わせ、信じられないといった面持ちだった。ソプラノ歌手は、静かに言葉を続けた。「これは一体何を私たちに語っているのでしょうか。恐らく、たった一つの説明しかないでしょう。つまり、神は、皆を平等に愛してくださるのであって、決して誰かに愛をより多く与えるということはないのです。」
彼女が話し終えると、人々はシーンと静まり返った。彼らは、驚きよりも、むしろ静かに考えていた。