何清漣:発展できない基点に立脚する中国経済

【大紀元日本3月15日】中国共産党第11回人民代表大会の二次会議開幕式が行われた3月5日、中国の温家宝首相は「発展の必要性と可能性をともに考慮した結果、GDPの年間8%成長する目標を設けた」と強調した。経済成長が就業率や、社会的安定を保つための鍵となると温氏は考えている。経済成長8%の達成の根拠は、温首相は内需を拡大させ、住民の消費を促進させることを立脚点としている。「政策が正しく、方法が現実的で、確実に実施されれば、必ず目標を達成させることができる」と報告でアピールした。しかし、その基点こそ中国経済発展のアキレス腱であると専門家は指摘した。

経済学者の何清漣氏米国在住)は最近、新唐人テレビのインタビューで、中国の消費低下の原因について分析した。原因のひとつは、中国人口の70%を占めている農民が1990年代から土地が奪われ、収入が減少し、都市に行っても高給がもらえないため、農民の消費割合が30年前の62%から2007年の25%まで低下したと指摘した。農村部の問題は常に中国経済の盲点であるにもかかわらず、温首相や官製メディアが「農村が消費潜在能力を有する重点である」とアピールしているのは、「あまりに非現実的」と批判した。

「土地、労働力及び農民の収入などの資本要素から見ると、農民はなんら有利な点はない。しかも、それがさらに拡大している。従って、中国のこれらの問題は常に中国経済の盲点になっている。2008年以来、農村部の状況はさらに悪化している。出稼ぎ農民2000万人余りが企業の倒産ラッシュで仕事を失い、農民500万人余りが都市部で生計を立てることができず、地元に帰ろうとしている。このような2500万人がもともと農民の中の高収入層であったが、収入がなくなった今、農村部全体の消費率が低下するはずだ。従って、当局の宣伝は、中国の現状とかけ離れすぎており、全く根拠のない話だ」。

また、住民の預貯金が急速に増加し、消費力が低下している現象について、当局の改革により医療、教育、年金などの福利制度がなくなったことから市民の不安が高まる一方であると分析した。預貯金の構成について、ほとんどは高収入層の所有であり極めて不均等であると指摘した。

何氏によると、「国家統計局の調査によれば、預貯金目的の第一位は子どもの教育費用であり、住居、医療、老後などが続いている。天津、上海、広州などの調査ではほぼ同様な結果が得られた」という。

「ここでは二つの問題がある。一つは、市民の貯蓄が急速に増加している時期は、ちょうど当局が高等教育の改革、いわゆる教育産業化をはじめた頃だった。それから住居市場化、医療保険、年金などの改革が続き、これらの負担をすべて個人に負わせたのだ。それで市民の将来に対する不安が募り、貯蓄が増大する結果となった」。

「もう一つは、5兆元から十数兆元の巨大な金融資産は、市民が均等に所有していないことだ。すなわち、社会格差の問題だ。当局が2005年に発表した資料によると、高低5段階評価で最も高収入層の金融資産は全体の66・4%を占めているが、最も低収入層の金融資産はわずか1・3%にとどまっている。単純計算で最高収入層の資産が最低収入層の51倍にもなるのだ。つまり、銀行の預貯金の大部分は、中低収入層の資産ではないことを意味している」。

何氏は、中国の消費低下現象を変え、内需を有効に高めるために、いくつかの関門を突破しなければならないと指摘した。まず、相対的に公正な社会分配体制を構築し、それから権力の市場化という中国経済の病根を取り除き、さらに政府集団化の傾向を根底から是正するという。

しかし、中国共産党官僚の私欲により、このような変革が実現する可能性はほとんどない。温首相が、経済成長は達成できるといくら強調しても、この達成の根拠である当局の「正しい政策、現実的な方法、確実的な実施」という条件こそ、中国共産党政権下の国家制度によって出来上がった経済発展のアキレス腱であると何氏も認めている。

(編集翻訳・杜XL)
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