【軍事】米軍の衝撃的軍事改革 ドローンの「ガントレット」選抜試験

2026/08/01 更新: 2026/08/01

米国防総省が進める軍事改革の核心「ガントレット試験」。ドローン優勢計画の下、調達制度を抜本転換し、低コスト大量生産と即時契約を実現する新モデルの実態と対中競争への影響を分析する。

ヘグセス氏は第29代米国防長官として、トランプ大統領の支持のもと、冷戦終結以来最大規模の抜本的軍事改革を打ち出した。特に注目されるのは、数十年続いた従来の調達制度を廃止し、スピードを最優先とする「戦時即応調達体制(Warfighting Acquisition System)」を導入した点である。さらに、大手防衛企業の独占構造を打破し、新興ハイテク企業を積極的に参入させ、民生分野並みのスピードで兵器を量産する方針も掲げた。本稿では、なかでも衝撃的な「ドローン優勢計画(DDP)」の「ガントレット(Gauntlet)」選抜試験を概説する。

米軍が調達改革に踏み切った背景

ロシア・ウクライナ戦争は、ドローンが戦争の形態を変えつつあることを明確に示し、米軍もこれを重視している。加えて、インド太平洋軍司令官サミュエル・パパロ氏は「ヘルスケープ(地獄の光景)」構想を提起し、台湾海峡に大量の無人システムを投入することで中国軍の作戦テンポを遅らせ、米軍の戦力展開に必要な時間を確保する考えを示した。

しかし、二つの重大な問題が浮上した。第一に、中国はドローンの産業基盤が充実しており、世界の商用市場の7割以上を占めるなど、圧倒的な規模の優位性を有する。第二に、米国防総省が2023年に打ち出した「レプリケーター計画」は行き詰まり、24カ月以内(2025年夏まで)に数千機の自律型ドローンを配備する目標を達成できなかった。インド太平洋軍への納入は訓練用の数百セットにとどまる。

その結果、米国の防衛調達制度の欠陥が露呈した。中国の強大な製造能力と低コスト生産に直面し、米軍はもはや従来の「高性能・高規格」路線では対応できない。「200万ドル(約3億円)の防空ミサイルで安価なドローンを撃ち落とすことは持続不可能」との認識が広がっている。

ドローン優勢計画(DDP)の狙いと規模

こうした背景から、ヘグセス氏主導のもと2025年末に「ドローン優勢計画(DDP)」が緊急に打ち出された。2年間で10億ドルを投じ、約34万機の低コスト自爆型ドローンを調達し、前線部隊に迅速配備することで、大規模な飽和攻撃と低コスト消耗戦を実現する狙いである。

目標達成のため、DDP計画は従来にない三つの手法を採用した。第一に、慣例を破り、外国製で実戦経験のあるドローンを積極的に導入する。第二に、ドローンを専門部隊のみが扱う高価な装備とみなす考えを改め、分隊・小隊レベルまで配備し、「運用しながら習熟する」体制を構築する。第三に、価格統制と技術の高速更新を組み合わせ、「ガントレット」方式の段階的選抜を行う点である。

初期段階では、選抜された12社の試作機単価を5000ドル(約75万円)に制限し、最終的に供給企業を5社に絞ることで、量産効果と商用部品の活用により単価を2300ドル(約34万円)まで引き下げることを目指す。

ウクライナ戦場ではドローン技術が2週間単位で更新されている。この現実に照らせば、大企業が膨大な報告書を作成し数年かけて審査した末に時代遅れの装備を納入する従来の調達プロセスはもはや実戦に適応できない。

過酷な「ガントレット」実戦環境での選抜

ヘグセス長官は「ドローンの優位性はプロセス速度の競争」と繰り返し強調する。ガントレット試験は国防イノベーション部門と試験資源管理機関が共同で実施し、机上審査には依存しない。企業は完成したドローンを持ち込み、米軍基地で前線兵士による実戦的環境下の試験を受ける。「合格すれば即座に大型契約を獲得し、不合格ならその場で脱落する」という厳しい仕組みである。

大手企業の多くが脱落

第1段階は2026年2月、ジョージア州フォート・ベニングで開始された。25社が参加し、電子妨害などの過酷な試験を経て、最終的に11社が選抜された。新興企業が優位に立ち、大手企業の多くが脱落した。最優秀とされたのは、ウクライナのSkyfall社と英国のSkycutter社が共同開発したドローンである。米軍はその場で1億5000万ドル(約225億円)を投じ3万機を発注した。

6月にはミシガン州キャンプ・グレイリングで第2段階の予選が実施され、49社・79種類のドローンシステムが参加した。各社は20機を投入し、長距離打撃または近距離戦術任務の分野で競い合った。7月には19社の主要サプライヤーが選定され、米国企業に加えウクライナ企業なども含まれた。

第2段階本試験は8月、コロラド州フォート・カーソンで実施予定である。参加企業は5週間以内に120機を持ち込み、昼夜の戦闘、都市戦、地下空間など多様な環境で試験を受ける。標準化された弾薬搭載の統合も義務付けられる。

提案要請書によれば、各分野の上位企業には8000機(約600億円規模)、7000機、6000機、5000機、4000機の発注が割り当てられる。本段階の契約総額は3億ドル(約450億円)に達し、「納品後支払い」を条件に企業の供給能力が厳しく試される。

10月には「ガントレット2.5」が開始され、中大型ドローンによる爆撃任務が新たに試験対象となる。2027年には第3・第4段階へと進む予定である。

ガントレットは単発の試験ではなく、6カ月ごとに更新される継続的選抜プロセスである。企業は高価な完成品で契約を得る従来型モデルから脱却し、現場フィードバックを反映し短期間で改良を重ねることが求められる。

中国依存の部品を排除

審査の重点も飛行性能だけでなく、安全保障基準への適合やサプライチェーンの信頼性にも移っている。中国依存の部品を排除できない企業は後続段階で脱落する。DDP計画の最終目標は、低コストで大量生産可能なドローン産業基盤を米国内に確立することである。

米中の軍事競争

従来の米軍にも極限環境試験は存在したが、研究施設内で行われる形式的なものであった。現行のガントレットは実戦環境で実施され、試験主体も研究者から前線兵士へと移行した。選抜方式も書類審査から即時評価・即時契約へと大きく転換した。

これは軍事調達の歴史においても異例の変革であり、いわば「プロセスそのものの革新」といえる。

中国側もこの仕組みに関心を示すとされるが、同様の体制構築は容易でないとの見方が強い。理由として、失敗を許容しにくい制度、中央集権的な統制構造、国際的な技術・供給網からの制約が挙げられる。

ガントレットが示す政策実行力は、中国軍内部の構造的課題と対照的であり、今後の軍事競争の行方を左右する重要な要素となる可能性がある。

王赫
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