英国バイリンガル子育て奮闘記 (70) 読みごたえのある成績表 (1998−2000年)

【大紀元日本1月17日】たまたま娘が行った学校に限ってのことかもしれないが、英国の成績表(School Report)は、まず文章で始まる、という印象を受けた。

こうして日本語と英語を比べるだけでも、日本語の場合はあくまでも「表」であり、数字が並ぶことが当然のような気がする。英語の場合は直訳すると「学校の報告書」であり、本人の状態を担任の先生が親に伝える文書という意味合いが含まれているようだ。

公立でも私立でも、先生方がその時の状況をつかんだ適切なことを書いてくださった。

小学校5年になる手前に私立に転校したのだが、5年も6年も、A5サイズの小冊子のような報告書だった。学校名の入った表紙付きで、1ページめは担任の先生のページ、2ページめから教科ごとの先生のページになる。当初は手書きだったが、数年後に全面的にコンピュータ化された。(偏屈で、技術の進歩に懐疑的なピアノの先生だけ、最後まで1人で手書きだったが。)

担任のページの上半分はコメントで、下半分には出席日数、遅刻日数、罰則を受けた回数、褒賞をもらった回数などの欄が設けられている。

そのあとのページは、英語、科学、歴史、地理、宗教(キリスト教に限らず様々な宗教を学ぶ)、情報伝達技術、フランス語、美術、工芸、音楽、体育、演劇の「報告書」になっており、最後は校長先生からのコメントのページで終わる。このセクションは、前の公立の小学校でも設けられていた。前の学校は全校生徒200人程度だったが、一人一人の生徒のコメントを手書きするとは、本当に頭の下がる思いだ。

各ページの上部は教科の先生のコメント、下部は各教科のポイントの横にA,B,C,Dで評価がつけられていた。例えば、英語の場合は、読解力、手書き能力、語彙、句読点、文法、スペル、理解力、想像的な文章力という項目があった。そして「全般評価」と「努力」という項目が一番下にある。ちょっと不器用で高く評価されないけれど、本人はすごく努力しているという場合、ここに現れるわけだ。結果より経過が、特に教育の現場では大切だ、と納得。

科学での評価のポイントは、書く作業、聞く能力、実践/クラス内での技能(グループ活動に積極的かということらしい)、発表能力という評価項目が記載されていた。歴史には書く、聞く、発表するという項目だけでなく、研究能力という項目もあった。後に中学の歴史の勉強では、書かれた文書を鵜呑みにしないで、まず疑ってかかって、自分なりの研究をして自分なりの結論を出すことに重点が置かれており、感心した覚えがある。

年に三回、学期末に受け取る親の方も、30分くらい時間を費やして、じっくり読むことが要される。他人との比較はない。本人が前の学期に比べてどのように成長していったか、ということが大切なわけだ。コメント欄でも「good progress(進歩した)」というような言葉がキーワードだった。

(続く)

著者プロフィール:

1983年より在英。1986年に英国コーンウォール州に移り住む。1989年に一子をもうけ、日本人社会がほとんど存在しない地域で日英バイリンガルとして育てることを試みる。