【ショート・エッセイ】家庭人としての小説家
【大紀元日本2月27日】『白い花が好きだ』と題されたエッセイ集が、その小説家にある。古本屋で見かけ、題名が気に入ったという、それだけの理由で購入したものが30年経った今も筆者の書架に並んでいる。
『八甲田山死の彷徨』『芙蓉の人』など、新田次郎の「山岳小説」を好んで読んだ時期があった。ところがこの「山岳小説」という呼び方(呼ばれ方)について作者自身は、「では、平地のことを書いたら平地小説というのか」と言って、ひどく嫌っていたという。
新田次郎の小説の舞台は、確かに山である場合が多い。しかもそれは峻厳な気候をもつ冬山や、人を寄せ付けない雪の高峰であり、それを自身の気象学者としての知識と、富士山気象レーダー勤務の実務経験に基づいて描写するため、荒れ狂う吹雪の叫びまで聞こえてくるようなリアルで重厚感あふれる文体となるのである。
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