≪医山夜話≫ (26-3) 心のダメージ

「ジェニー、あなたのご家族は継父さんをどう思っていたのですか?」

 彼女は頭を振りながら天井に目を向け、まったく理解できないという表情をしながら話してくれました。「兄は、継父が市長か議員の選挙に立ち、優秀な政治家になればいいと話し、姉は、継父は話が上手く他人に親切なので、牧師になる素質を備えていると言っていました。彼が子供に教える時はとても熱心で真面目なので、もう一人の姉は継父がかつて教師だったのではないかと思っていました。そのため、私は家の中で彼の悪口を言う勇気がありませんでした。みんなは、きっと私が彼に対して偏見を持っていると思うからです。彼は、家の中ではとても自然に、優しく振舞っていました。私たちが暮らしている世の中でも同じことで、悪い人は人を騙して良い生活を手に入れますが、虐げられた善良な人は苦痛の中で生活しています。中国では、法輪功の修練者が迫害を受け、悪人らはずうずうしく世間を騙して、民衆は真相が分かっていません。そのため、民衆は被害者たちを責めてしまいました」

 その話を聞いて、私はとても感動しました。自由な国に暮らしている彼女が、地球の反対側にいる善良な人たちに同情を寄せることは、容易なことではありません。そこで私は、ジェニーに「真善忍」、修煉、病気を追い払って健康を保つこと、良い人になること、他人のために考えることなどについて話しました。

 しかしジェニーは、「私はまだ、今は修煉したくありません。それより、私は誰なのか、何のためにこの世に来たのかを知りたいのです。まだ心に捨てたくないものがあります。もし良い人になるならば、私は継父を許さなければなりません。私は、修煉することを拒みませんが、復讐できる時にまず継父を殺してから、それから善良な人に変身したいのです」と言いました。

 人間は、悪魔に心を取られて悪い事をしたら、それによって傷つけられた人は、相手が懲罰を受けるまで、永遠に恨みを抱えて追い続けるのです。人間は、何事をするにも前もってしっかり考えてから行動しなければなりません。善にも悪にも報いるがあるという事は、天の理なのです。

 ジェニーはネットで法輪大法の情報と資料を探して読みました。分からない部分を私に聞いてきたので、私は出来るかぎり誠意をもって答えました。

 「私は夢を見ました」と、ジェニーは言いました。

 「夢だったのですが、きっとどこかで本当に起こったことだとその時、思いました。しかし、夢であるのか確信できず、私は爪で泥をほじくりました。今でもその時の光景を鮮明に覚えていて、あの泥の匂いがまだ体に残っているようです……」

 「夢で何を見ましたか」

 「私はうっかりして大きな泥沼に落ちてしまいました。張り巡らされた壁はとても高く、出られそうにありません。最初はそこが汚くて嫌だったのですが、徐々に慣れました。出ようとして壁を這って途中で滑り落ちた人もおり、自分が出られないので、出る努力をする人を下の方へ引っ張る人もいました。もうすぐ自分が出られるのに、肉親を助けるために自分まで落ちてしまった人もいます。皆、過去に罪を犯したからここに堕ち、いまさら後悔してもしかたがありません。しかし、出られないので、みんな互いに責め合っています。ここに居る人はみんな親族関係があって、何代も前からここにいた人もいます……。私は、これがただの夢であってほしくて、自分自身に『早く目覚めよう、早く目覚めよう』とつぶやきました。幸い、私は本当に目が覚めて、あれは本当にただの夢だったのです……。ここは現実ですよね?」彼女は自分の腕をつねって確かめました。

 「目が覚めた後で、まず第一に思いついたのは、あなたとあなたが言った法輪功を探すことでした。あなたたちが煉功する湖の辺りに行って資料をもらったり、資料に書いてあるURLにアクセスしてみました」

 

 「私は法輪功に関する簡単な紹介を読みました。過去に、あなたから『真善忍』を聞いた時、とても良いと思いましたが私からは遠く離れていると感じました。今回真面目に読んで、この三文字に少し親しみを覚え、日差しのように私の暗い心の底まで照らしました。もし私が『真善忍』を行なえば、きっと夢で見た泥沼から抜け出ることができると思います」

 彼女の話を聞いて私は感無量でした。彼女は修煉とは何か、法輪大法とは何かを真剣に知りたいと願っています。一方、私は街頭で法輪功の真相資料を配る時、時々通行人に冷たく断られます。ジェニーと違って、目の前にある機縁を簡単に逃す人もいます。

 ジェニーは、「今、復讐の事は忘れるべきだと思いました。彼はきっと地獄に落ちるので、私も彼と同行したくありません。前世において、私はたくさんの悪事を働いて彼に借りを作ったのかもしれませんね……今、私は修煉を始めたいと思います。自分のためばかりを考える良くない考えを除去したいです。

 継父と世の中のすべての児童虐待をする人々に、話をしたい。穏やかで寛容な心を持ち、厳粛で恨みを持たない言い方で。私達は罪を償うためにこの地球に来たのです。生命は輪廻しています。天の理と道義に背くことは止めてください。過ちを改めて、新たな人生を始めましょう」
 

(翻訳編集・陳櫻華)