「札束を持ってカンヌへ」 ノミネートなしも「太っ腹」な中国映画界
【大紀元日本5月24日】22日(現地時間)に閉幕した第64回カンヌ国際映画祭では、ノミネートされた中国語映画は1つもなかったが、銀幕の裏の中国の映画配給会社の「活躍」には少しも影を落とすことはなかった。「中国の映画市場は(資金が)豊富にありすぎる。うちの20部近い作品は中国の1社が丸ごと買い上げた」と、18日付の中国誌・南方週末はこのようにアメリカのある映画配給会社の驚嘆ぶりを伝えた。
金なら事欠かない
広州日報は、「多くの映画人がカンヌに赴いているのは、我々が思っているように国産映画を世界に売り込むためではなく、世界の映画を買い漁るためだ」と指摘した。中国からの映画バイヤーがカンヌで札束をばらまき、同業の中国人でさえも、中国人同士の競り合いで「無名」な外国映画でも値が数倍に押し上げられていることを嘆かざるを得ない。
「みんな狂っているわ。イギリスのある有名な配給会社の人は私にこんなことを言ったわよ。『去年年末あなたがほしがっていたあの映画。40万ドルは高いからって買わなかったでしょう。いまはすでに100万ドルになっているよ。しかも15社の中国の配給会社がまだ競り合っているの…』」。北京にある映画配給会社「華獅盛典文化伝媒」に務める、カンヌ映画祭の担当者・蒋燕鳴さんは自らのミニブログでこうつぶやいた。
蒋さんは北京紙・新京報に、この現象が続くと、国産映画がますます萎縮してしまうと警鐘を鳴らしている。「一から映画を製作することは、外国から作品を購入するよりはるかに経費がかかる。その結果として、製作が敬遠され、いい国産映画が少なくなる。カンヌでは中国の映画がなかなか売れないのはそのためだ」と指摘した。
カンヌ在住の映画記者・趙静さんもミニブログで憂いた。「イギリスの映画専門誌『スクリーン』はここ何日間も、大喜びしているようだ。新しい太っ腹なクライアントが見つかったからだ…中国映画の広告は値段の高い紙面から埋めていく…」。ノミネート作品さえないにもかかわらず、カンヌの街にも中国映画の巨大広告が目立つという。
金だけでは物足りない
中国映画局が公表したデータによると、2005年度の海外市場における中国映画の興行収入は16.5億元で、同年の国内興行収入は20億元。2010年にはそれぞれ35.17億元と102億元に成長した。5年間で、中国映画が海外市場では113%の伸びを見せているが、国内市場の410%の伸び率からはかけ離れている。
今回カンヌ映画祭コンペティション部門審査員のナンサン・シー(施南生)氏は、映画の取引きには金はすべてではなく、ルールも大事だと強調した。「一部の人は考え方がおかしい。金があれば解決できないことはないと思っている」と氏は中国の映画配給会社の現状を批判し、「プロの意識で、守るべきルールを守って国際的な取引きに望んでほしい」と呼びかけた。「金があり、市場があり、人もある。人が多ければ威勢も出る。そう思っているなら少し考え方を改めたほうが良い。愚行の結果は自分にはね返るものだ」と中国の映画界に忠告した。
(翻訳編集・張凛音)