【分析】中共はなぜ対台威嚇に海軍ではなく海警を使うのか

2026/06/05 更新: 2026/06/05

日本とフィリピンがこのほど、台湾東方海域における排他的経済水域(EEZ)および大陸棚の境界画定交渉を開始すると発表した直後、中国共産党(中共)海警局は「台湾島東方海域で法執行パトロールを実施した」と大々的に公表した。中共軍関係者によると、今回、中国側が海軍ではなく海警を台東沖に投入した背景には、常態化した活動を通じていわゆる「管轄権」の既成事実化を図り、認知戦を強化して台湾社会に政治的圧力を加える狙いがあるという。

2026年5月28日、日本とフィリピンはEEZおよび大陸棚の境界画定交渉の開始を発表した。対象海域は台湾東部から南東部沖にかけての重複海域を含む。これを受け、中共海警局は6月1日、岱山艦(2502)を含む編隊を「台湾島東方海域」に派遣し、法執行パトロールを実施したと初めて公表したうえで、日比間の境界画定交渉に対する対抗措置であると主張した。

海警巡航 認知戦へ重点移行

中共軍に近い関係者の唐傑さんは大紀元の取材に対し、海警巡航の最大の目的は台湾の人々に対する認知戦を一段と強化することにあるとの見方を示した。

唐さんは「中共側は、こうした行動によって台湾総統府を威嚇することはできないと考えている。現在は、台湾の人々に影響を与えることを狙っている。対外宣伝を通じて台湾の人々に対する心理的圧迫を強め、2028年の台湾総統選に影響を与えたい考えだろう。期待は(国民党主席の)鄭麗文氏にかけられており、たとえ思うような成果が得られなくても支援を続けるつもりだ」と語った。

近年、中共は台湾に対する軍事的圧力を弱めていないが、注目されるのは軍艦や戦闘艦隊を前面に押し出す場面が減少し、代わって海警船や公船、海洋監視船による「法執行パトロール」を頻繁に実施するようになった点である。

中台関係を研究する厦門大学の余承さんは、中共が最近、軍による活動ではなく海警による「法執行パトロール」を多用している背景には、経済的事情があると指摘した。

余さんは「一言で言えば、資金不足だ。軍用機1機を飛ばすだけでも数十万から百万元単位の費用がかかり、年間では数十億元に達すると聞いている。台湾側もすでに慣れており、軍事行動の常態化を強調しても効果は限定的だ。鄭氏が北京を訪問した後、北京側もコスト削減を考慮した可能性がある。海警なら費用が安く、リスクも低い。そのうえ『台湾は包囲されている』という心理的圧力を与え続けることができる」と述べた。

余さんは、中共のこうした手法は一見強硬に見えるものの、実際には台湾侵攻能力や意思決定体制の弱点を露呈しているとの見方を示した。

同氏は「現在、中共は台湾への圧力維持戦略を再検討している。軍艦は戦争を象徴するが、海警は政治を象徴する。軍艦の出現は軍事行動のエスカレーションを意味する一方、海警であれば『行政執行』『海洋管理』『主権維持』といった名目で正当化できる」と説明した。

さらに「この手法は尖閣諸島や南シナ海で10年以上にわたり繰り返し用いられてきた。現在、北京は同じ手法を台湾周辺海域にも適用しようとしている」と指摘した。

海警による軍艦代替でコスト削減

台湾東部は長年にわたり戦略的後方地域とみなされ、有事の際にはアメリカ、日本、フィリピンが台湾周辺に進出する重要なルートとなる可能性がある。蘭嶼(らんしょ)、緑島、台東沖は第一列島線の要衝に位置している。

中共体制内部の関係者である楊さんは記者に対し、「北京は海警の常態的な出現を通じて、台湾社会の東部海域に対する安全認識を徐々に弱め、本来は国際的な航行の自由が認められた海域を、自らの『管轄海域』であるかのように演出しようとしている」と語った。

楊さんは、真に警戒すべきなのは今回の巡航そのものではなく、今後三つの現象が現れるかどうかだと指摘した。

「第一に、海警が蘭嶼や緑島周辺海域へ頻繁に進入すること。第二に、巡航頻度が年1回から月1回へと増加すること。第三に、単艦行動ではなく編隊行動へ移行することだ。ただし現在の対台政策は一人の判断に大きく左右されており、長期的な計画に基づいているわけではない。もし最高指導者が方針を変えれば、政策も変わる可能性がある」と述べた。

軍委の混乱 台湾侵攻能力を制約

別の軍関係者は、張又侠ら軍高官の失脚や指揮系統の再編がなお完了しておらず、北京が台湾海峡での戦争という巨大なリスクを負うことは困難な状況にあると指摘。台湾侵攻の条件が整わない中、中共は海警の巡航と認知戦を強化する以外に有効な手段を持っていないという。

軍関係者は「中共は低コストで『いつでも行動を起こせる』という印象を作り出そうとしている。その理由は単純で、財政、人員、軍事力、指揮系統のいずれも外部が想像する以上に弱体化しているからだ」と指摘。「中央軍事委員会の指導部再編に関する話も聞こえてこない。これは大規模な対台戦争を遂行するための軍事条件が整っていないことを示している。戦争を始める前には軍委指導部の再編を完了させ、命令系統を確立する必要がある」と語った。

さらに「台湾侵攻は単に『開戦』を命じれば実行できるものではない。上陸作戦には海軍、空軍、ロケット軍、戦略支援部隊、後方支援システムの連携が必要であり、東部戦区と南部戦区の共同作戦も不可欠だ。現時点ではそのような準備の兆候は見られない。最近では台湾社会の内部崩壊に期待し、国民党や地下組織などの勢力を利用しようとする考え方が語られている」と述べた。

過去2年間、中共軍上層部では前例のない規模の粛清が続いた。ロケット軍は大規模な整理対象となり、装備発展部門でも相次いで高官が失脚した。軍指導部の全面的な刷新を受け、外部では中共軍が短期間で従来の体制を回復することは困難との見方が広がっている。

周玉
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