令和8年版防衛白書 「新しい戦い方」への変革を提示 無人機・AI活用 人材基盤も強化

2026/08/04 更新: 2026/08/04

防衛省は8月4日、令和8年版防衛白書「日本の防衛」を公表した。今回の防衛白書では中国やロシアの軍事活動が活発化し、日本が「戦後最も厳しく複雑な安全保障環境」に直面しているとの認識を示し、無人機や人工知能(AI)を活用した「新しい戦い方」への対応、防衛生産・技術基盤の強化、自衛隊員の処遇改善などを打ち出している。

防衛白書は、日本の防衛政策や自衛隊の活動を国内外に平易に説明する目的で1970年に創刊され、1976年以降は毎年刊行されている。

小泉進次郎防衛相は同日の閣議後記者会見で、今年の白書は、これまで手に取る機会のなかった国民にも読んでもらいたいとの強い思いで作成したと述べ、安全保障は国民一人一人の暮らしや将来に直結する問題だと強調した。

白書は、ウクライナ侵略などで顕在化した「新しい戦い方」を取り上げる章を新設した。安価で多様なドローンや無人水上・水中航走体を大量に投入し、有人装備と組み合わせて運用する手法は、相手側に大きな対処費用を強いる「ゲーム・チェンジャー」になっていると分析した。

各種センサーが収集した大量の情報をネットワークで一元化し、AIなどで迅速に処理・分析する態勢も重視した。指揮官が相手より早く正確な判断を下す「意思決定の優越」を確保し、新たな防衛態勢につなげる狙いである。防衛省は「防衛省次世代情報通信戦略」に基づき、ハイブリッド・クラウドや強靱なネットワークの構築を進めている。

武力侵攻に先立つサイバー攻撃や、SNSを通じた偽情報の拡散、世論への情報操作にも警戒を示した。こうした情報戦が恒常的に行われ、平時と有事の境目が極めて曖昧になっているとの認識である。

小泉氏は記者会見で、中国とロシアの海軍艦艇が日本を周回する形で共同航行し、排他的経済水域(EEZ)内で射撃訓練を行っていることについて、「我が国に対する示威活動を明確に意図したものであり、我が国の安全保障上、重大な懸念」と表明した。

白書における中国への評価は従来の内容を踏襲した。一方、尖閣諸島周辺を含む日本周辺の海空域で中国の軍事活動が急激に活発化しているとして、警戒監視に万全を期す方針を示した。

小泉氏は、過去に核兵器をめぐり「あらゆるタブーなく議論すべき」と述べたことについて、防衛政策の一般論として、国民の生命と平和な暮らしを守る政策を「あらゆる選択肢を排除することなく、丁寧に説明しながら議論していくことが重要だという趣旨だった」と説明した。その上で、政府として非核三原則を堅持する方針を改めて確認した。

政府は、安全保障環境の変化を踏まえ、2022年に策定した国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画の三文書について、2026年中の改定に向けた検討を進めている。小泉氏の下に設置した「防衛力変革推進本部」が検討の中心を担う。

高市内閣は、防衛関係費を国内総生産(GDP)比2%水準とする予算措置を前倒しで進めている。令和8年度予算は、沖縄に関する特別行動委員会(SACO)関係経費などを含め、初めて9兆円を超える約9兆353億円となった。

日本は、侵攻する部隊を脅威圏の外から阻止する「スタンド・オフ防衛能力」を中核に据え、武力攻撃を防ぎ抑止するための反撃能力の保有と運用態勢の整備を進める。統合防空ミサイル防衛能力、無人アセット防衛能力、領域横断作戦能力など「7つの重視分野」も抜本的に強化する。

白書は、防衛生産・技術基盤を「いわば防衛力そのもの」と位置付けた。自前の工廠を持たない日本では、装備品の製造や維持、整備を民間企業に大きく依存しているためである。小泉氏は「生産力こそ抑止力」と強調した。

防衛省は、民間の先端技術を取り入れる「Defense Innovation Meeting」の開催や、新たな研究機関の創設を進める。防衛装備移転三原則と運用指針を改正し、完成品の移転を制限してきた「5類型」を撤廃するなど、戦略的な装備移転も推進する方針である。

防衛力のもう一つの基盤である自衛隊員については、「プロフェッショナルな自衛隊員」と題した章を新設し、隊員の活動や家族の声を紹介した。少子化が進む中、手当の新設・引き上げ、隊舎の個室化、主要艦艇への商用低軌道衛星通信網の導入などを進める。自衛官独自の給与体系の改定や、ハラスメントを一切許容しない組織文化の構築にも取り組む。

対外面では、日米同盟を安全保障の基軸としながら、日米豪、日米韓、日米豪比などの少数国間協力を推進する。オーストラリア、英国、フィリピンなどとは円滑化協定(RAA)や物品役務相互提供協定(ACSA)の締結・適用を進め、英国、イタリアとは次期戦闘機を共同開発する。

小泉氏は、日本が各国の取り組みを結ぶ結節点となり、「頼りになるパートナーであるよう積極的な役割を果たす」と表明した。白書は、平和国家としての歩みを維持しながら、技術、装備、人材、国際連携を一体的に強化し、防衛省・自衛隊の変革を加速させる方向性を示した。

エポックタイムズの記者。東京を拠点に活動。政治、経済、社会を担当。他メディアが報道しない重要な情報を伝えます
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