中共は「最大の戦略的挑戦」 2026年版防衛白書 台湾・尖閣情勢に警戒

2026/08/13 更新: 2026/08/13

論評

日本の2026年版防衛白書は、中国(中国共産党、以下「中共」)を日本にとって最大の戦略的挑戦と位置づけ、台湾情勢の緊迫化に警戒感を示すとともに、アメリカとの防衛協力を一段と強化する方針を打ち出した。

防衛省は8月4日、2026年版防衛白書「日本の防衛2026」を公表した。白書は、防衛省・自衛隊の関係部局が毎年取りまとめている。

小泉進次郎防衛相は巻頭言で、日本を取り巻く安全保障環境について「戦後最も厳しく複雑なもの」だと指摘した。中共の対外姿勢や軍事動向については「これまでにない最大の戦略的挑戦」であり、日本と国際社会が対応していく必要があるとした。

白書は、中共が30年以上にわたり、透明性を欠いたまま国防費を大幅に増やし続け、核・ミサイル戦力や海空軍力を拡大してきたと指摘している。

2025年に起きた具体例として、硫黄島東方や太平洋での中共空母の活動、6月と7月に中共軍機が自衛隊機に異常接近した事案、12月に中共軍戦闘機が自衛隊機に約30分間レーダーを照射した事案を挙げた。

2025年度に航空自衛隊の戦闘機が緊急発進した回数は計595回で、このうち中共軍機に対するものが366回、ロシア機に対するものが214回だった。

台湾を巡る軍事バランス、中国優位に傾く

台湾について白書は、中共と台湾の軍事バランスが急速に中共優位へ傾いていると指摘した。

中共当局は、台湾統一に向けた武力行使を放棄していないと繰り返し表明している。白書は、中共が全面的な武力衝突には至らない「グレーゾーン」で、海警局の船舶を台湾周辺に展開し、事実上の封鎖を行う可能性があると警告した。

また、中共軍が台湾周辺で行う軍事演習について、人民解放軍が台湾周辺で活動する状態を既成事実化するとともに、戦闘能力を高める狙いがあると分析した。

中共は一度の大規模な攻撃ではなく、台湾周辺で軍事活動を繰り返すことで、軍の展開を徐々に常態化させようとしている。個々の行動を明確な侵略行為と捉えにくくしながら、中共軍が台湾周辺にいる状態を既成事実化する狙いがあるという。

こうした中共の台湾に対する軍事的圧力は、日本の安全保障にも直接関わる。

高市早苗首相は2025年11月、国会で、中共が軍艦や武力を用いて台湾に対する海上封鎖などを行った場合、日本にとって「存立危機事態」になり得るとの認識を示した。

2015年に成立した安全保障関連法では、「存立危機事態」と認定されれば、日本が直接攻撃を受けていない場合でも、集団的自衛権を行使し、自衛隊を出動させることが可能になる。

現職の首相が台湾有事の具体的なケースを挙げ、「存立危機事態」になり得ると明言したのは初めてだった。これに中共政権が発言の撤回を要求し、日中関係は過去10年以上で最も深刻な危機に陥った。

尖閣諸島周辺にも強い警戒感

白書は、尖閣諸島周辺の情勢にも強い警戒感を示した。

中共は東シナ海、とりわけ尖閣諸島周辺で活動を活発化させており、こうした動きは第1列島線から第2列島線にまで広がる中国の活動の一環だと指摘した。

白書は日米同盟について、地域の平和と安定は一国だけでは実現できないとの認識に立ち、日本の安全保障政策を支える重要な柱と位置づけている。

米政府は尖閣諸島の領有権について特定の立場を取っていない。一方、尖閣諸島が日本の施政下にあることから、日米安全保障条約第5条に基づくアメリカの防衛義務の対象になるとの立場を示している。

この立場は歴代米政権によって繰り返し確認されてきた。

2017年には、トランプ大統領と安倍晋三首相が、尖閣諸島が日米安保条約第5条の適用対象であることを確認し、日本の施政を損なおうとする一方的な行動に反対した。

バイデン元大統領も2021年、菅義偉首相に対し、日米安保条約第5条に基づくアメリカの防衛義務には「尖閣諸島が含まれる」と明言した。

日米両政府は、「同盟調整メカニズム」を通じて、北朝鮮によるミサイル発射や尖閣諸島周辺での中共の活動などに共同で対応している。

日米、防衛面での連携を強化

白書は、日米の防衛戦略はいずれも、力による一方的な現状変更を抑止することを重視していると指摘した。

アメリカではトランプ2期目政権が2026年1月、「米国第一」を掲げた国家防衛戦略を発表した。日本は今後、日米それぞれが果たす役割や能力について米側との協議を深めていくとしている。

また、小泉防衛相が1月にヘグセス米国防長官と会談し、緊密な協力を確認するとともに、防衛関係をさらに強化する方策について協議したことにも触れた。

中共の軍事的な動きに対応するため、日本政府は防衛力強化を加速させている。防衛費をGDP比2%に引き上げる目標を前倒しし、予定より早く達成した。

2026年度の防衛関係費は、在日米軍再編に伴う経費を含め、初めて9兆円を超えた。ドル換算では約571億ドルとなる。

日本の国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画からなる「安保三文書」も、予定を前倒しして2026年中に改定される予定だ。

改定作業は、小泉氏が就任後間もなく設置した「防衛力変革推進本部」が主導する。改定では、中共の軍事的な動きへの対応をさらに強化し、日本の主権防衛を重視する姿勢が反映されるとみられる。

中露朝の連携にも警戒

白書は、中露の軍事的な連携にも警戒感を示した。

2025年9月に行われた軍事パレードでは、習近平、ロシアのプーチン大統領、北朝鮮の金正恩がそろって姿を見せた。その後、中露は日本周辺で爆撃機による共同飛行を実施している。

白書は、ロシアによるウクライナ侵攻を、力による一方的な現状変更が現実に起きた重大な事例として捉え、インド太平洋地域でも同様の事態が起こる可能性に警戒を示している。

2026年版防衛白書からは、台湾海峡や尖閣諸島周辺の情勢、さらにウクライナ侵攻を、力による現状変更という共通の安全保障上の課題として捉える日本政府の姿勢がうかがえる。中共への対応を念頭に、日米の防衛協力を一段と強化する方針も鮮明になった。

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