中国極貧村の現状  あるボランティア女性の報告2

【大紀元日本8月14日】2002年から7年間、中国大陸で貧困者支援のボランティアを続けていた唐米豌さん(※)は、語り切れないほどの現実を目の当たりにしてきた。その生活状況はマレーシアでは絶対にありえず、人々の極貧の度合いは想像の限度を超えていたという。

2011年6月、マレーシアで「新紀元」誌の取材を受けた唐さんは、現代的な都市で豊かな生活を送っていた彼女にとって、中国での貧困者支援において日常的に起きる出来事はみな、そのまま続けていけるかどうかの試練の連続であった、と語った。

農村部の「大自然トイレ」

山西省襄汾県城の北西25キロのところに、襄陵鎮という町がある。その地域は比較的水と土壌に恵まれていることから、「金襄陵」と呼ばれており、人々の生活はそれほど貧しくない。しかし、そこにも、水道もなく電気もない極貧村があり、トイレが難題となっている。

それらの村では、ボロ屋であろうと新築の家であろうと、トイレがない。皆、家の裏の地面に大きな穴を掘り、穴の両側にレンガを一つずつ置く。「大自然のトイレ」だ。老若男女誰でもそこで用を足し、裏庭に人が入ってくると一目瞭然である。

私は村の売店で傘を2本買ってきた。値段は結構高かった。なぜなら、彼らはほとんど傘を使わないからだ。トイレのときに、前に一本、後ろに一本差すのだ。すると、30分も経たないうちに、村中にうわさが広まった。「マレーシアから来たあの女性は、トイレのときに傘を差しているよ」

中国の農村では、ほぼ毎日このような光景に出くわす。ある家のおばさんが用を足しているのに、隣の家のおじさんがお椀を手にご飯を食べながらこのおばさんと話をしている。これは極普通のことで、受け入れられないと思うのは私だけで、村人は私のほうが頭がおかしいと思っていたようだ。

2006年、私は四川省涼山州越西県大屯郷高橋村付近のハンセン病患者が集まる村を訪れた。彼らの主食はトウモロコシ。私は江西省の山村で半年以上トウモロコシを食べていたので、トウモロコシが怖くなっていた。

山西省にいた時の私の食事は、朝・昼・晩とも、ゆでトウモロコシが1本ずつであった。このような日々が5か月続いた。自分もトウモロコシになったような気がした。顔が黄ばんで、一つひとつの粒になったようだった。しかし、村人たちは先祖代々これを食べているので文句の一つもなかった。そこでは、多くの生徒が家が貧しくて、一日の食糧はトウモロコシ1本だった。彼らに比べると私は幸せだ。一日に3本も食べられたのだから。

トウモロコシに拒絶反応が出ていた私は、四川省のハンセン病村では村長に相談し、トウモロコシを豚の餌であるサツマイモと物々交換した。腐った部分を切り落として食べるのだ。すると、30分も経たないうちに、村中にまたうわさが広まった。「マレーシアから来たあの女は精神異常者だよ。しかも重症だ。トウモロコシを食べないで、豚の餌のサツマイモを食べるんだ」という。

村民たちが私のボランティア活動に非常に感謝しているのは確かだ。彼らは塩と物々交換するために鶏の卵を私にくれた。そして誰もが一言付け加えるのであった。「卵を食べ終わったら、卵の殻を返してください」と。私はそのとき、彼らは花や草を植えるために肥料に使うのだろうと思った。でも、実際は違っていた。彼らは卵の殻を細かく砕いて、沸騰したお湯に入れて、砂糖水として飲んでいるのだ。ここまで貧しいのである。

ナプキンもなく、下着もない

江西省、貴州および広西省の貧困地域で、私は困っていた。

村に着いて数日して、生理がきた。使い終わったナプキンを家の側のゴミ箱に捨てた。すると、毎朝、そのゴミ箱をあさる子どもたちが現れた。母親に、唐先生のところに何か宝物があるか探しておいで、と言われたそうだ。最初の数日間は、彼らは使い捨てのパンツを拾って、洗ってから乾かしていた。母親たちがこれを再び穿くのである。その後、捨てられたナプキンを奪い合うまでになった。

最初の頃は、なぜ、汚いナプキンを争奪するのか理解できなかった。後に、村を一回りしてみて、数軒の家の前で漂白されたナプキンが干されているのを発見した。村の女性は10代から30代までにしか生理が来ない。長期的な栄養不良に加えて、衛生環境が非常に悪いため、女性は30代前半で生理が終わってしまう。だから、彼女たちの外見は都市の女性より老けている。

私は当時すでに50歳だったが、それでも生理があり、村人から妖怪だと思われた。村の女たちは繰り返し漂白したナプキンを使っていた。長期にわたってこのようにしていたので、彼女たちは皆婦人病を患っていた。

村の元気な者はほとんどが出稼ぎに行っており、残されたのはほとんど老人と子どもたちだ。彼らは皆パンツを穿かないのに気づいた。そのわけを聞いてみたら、「先生は本当に頭が悪い。私たちは貧しくてご飯も満足に食べられず、毎日1本のトウモロコシしかないのに、パンツなんかあるわけがない」という答えが返ってきた。後に、私は香港とマカオのボランティア組織や福祉団体に連絡して、ナプキンとパンツの提供を依頼した。状況を伝えられた相手は不思議がった。そんなものを要求するのは私が初めてだったようだ。後に私は中国に行くたびに、ナプキンとパンツをたくさん持ち込んだ。

日が経つにつれて、新たな発見があった。村の人たちの多くは服を洗わない。ワンシーズン、3~4か月間着ても、一度も洗わない。シャワーも浴びない。夏には1回ぐらいは体を洗うようだが、真冬は大晦日にしか体を洗わない。体がとても臭いが、村中の人が皆そうなので、臭いと思わないようだ。

しかも、よく夏には冬の服を、冬には夏の服を着るのである。香港やマカオから送られてくる服は、季節の変わり目に寄付されたものばかりである。夏には冬の服が、冬には夏の服が寄付される。極貧地区の現地政府から配給があれば、村民たちはその場で新しい服に着替えるのである。

私は素朴な質問をした。「なぜ、その服を取っておいて、来年の夏に着ないの」「そんなこと言ってられると思う?」彼らの家には他に服がないのだ。

シラミ駆除と練り歯磨き事件

中国での生活の中で、最も怖かったのは何かと聞かれた。飢えに耐えるのはもちろん怖くない。7年間で、お腹いっぱいになったことはほとんどなかったからだ。最も怖いのはシラミだ。村人全員、体中シラミだらけだ。私は潔癖症ではないが、シラミには怖くて体が震えるほどである。英語クラスをスタートするときに、私はうわさを流した。授業を受けたい人は、授業料はいらないけれど、条件が一つある。つまり、「私に頭を洗わせてください。シラミを駆除します」ということだ。英語を勉強するために、70~80人のこどもたちが並んで頭を洗ってもらうのを待っていた。私は老後のための貯金を切り崩してガソリンや、タオル、石鹸をたんさん買ってきた。ガソリンで濡らしたタオルで髪の毛を包み込んで、翌日洗い落とす。

また、子どもたちに衛生の習慣をつけるために、私は一人に1本ずつ練り歯磨きを配った。江西省での体験だった。200世帯以上に配り終え、くたくただった。宿舎に戻って休む間もなく、子どもたちがドアを叩いた。「先生、先生、大変だ」と叫んでいた。皆が嘔吐して、口から白い泡を噴いていた。彼らは練り歯磨きをおやつとして食べてしまったのだ。現地では、豚の毛と塩で歯を磨くのであり、しかも塩を節約するために、毎日磨くわけではない。だれもが練り歯磨きを見たことがなかったのだ。

中国でのこの7年間の実体験を振り返って、私は命の尊さを真に理解できた。そして、以前の自分がどれほど贅沢で、いかに無駄遣いをしていたかを思い知らされた。

人は私利私欲のために争ったり傷だらけになったりして、時には手段を選ばない。今になって、私は初めて、人生とはとても単純なものだとわかった。つまり、おしゃれかどうか、ご飯を満足に食べられるかどうかは問題ではない。大切なのは、ひたすら善の行いを続け、正々堂々と生きていくこと、そして、心から喜んで人助けをすることだ。

ボランティアの体験を本にまとめて出版した唐米豌さん(写真=楊暁慧)

(※)唐米豌さん

本名:陳美芬、1956年マレーシア生まれ 。長年、新聞記者を務め、後に引退してボランティア活動に励んでいる。中国のガン村での7年間のボランティア活動を2冊の本にまとめて、2010年に出版した。以来、中国政府のブラックリストに載せられて、入国禁止となった。また、講演などで中国の現状を積極的に訴えており、「自分は普通の中年女性であり、できることは限られている。しかも、まだよく行えていない。本を通して、国際社会の共感を呼び、善意的な行いを広げていきたい」という。

(記者・楊暁慧、翻訳編集・叶子)
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