【大紀元日本8月29日】決められたテーマに沿った作品を10枚制作することが義務づけられ、それ以外に最低6点の作品提出が求められていた。その年のテーマは「空間と構造」。高校の美術の先生に、娘の強みは折り紙だと指摘され、織り鶴やら蓮の花などを紙で織り、テーブルに並べて水彩で写生した。想像力、創造性が問われるため、どんな形で折り紙を並べるか、どこにならべるか、水彩でなくモザイクで描くか、などなど彼女の発想に合わせて、家の隅々に素材の山が積み重ねられていった。
「ちょっとー。これ終ったのお?片付けていいの?」と問いかけることも諦めて、自分にストレスを貯めないように、スタジオの中で生活することに覚悟を決めた。
12月にまた各教科の先生との面談があったが、今回は「基礎コースを受験するから他の教科の勉強はできません」って言いにきて、と娘に指示された。
これまで受け身でテレビばかり見ていた娘が、これほど熱心になったのは始めてのことだった。よく眠り、怠惰な生活を送る娘に対して、こういうゆとりの時期は大切、と自分に言い聞かせて耐えていた甲斐があった。なんでも自分の心の中から出てこなければ、成し遂げることはできない。
クリスマス休暇に作品を提出。ろくに休んでいなかった。そして2月に面接。各々の作品が区切りのついたテーブルに置かれ、複数の試験官が、一対一で作品の前で面接する。わずか10分くらいの面接が終ったあと、言いたいことが言えなかったと、娘は落ち込みきっていたが、数週間後、合格の通知が舞い込んできた。
(続く)
著者プロフィール:
1983年より在英。1986年に英国コーンウォール州に移り住む。1989年に一子をもうけ、日本人社会がほとんど存在しない地域で日英バイリンガルとして育てることを試みる。
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