後を絶たないチベット人の焼身自殺 世界各地で追悼と抗議活動

【大紀元日本10月21日】チベットでは今年に入ってから、中国政府の抑圧政策に抗議するため、チベット人が焼身自殺する事件が相次いでいる。17日には尼僧が自殺を図り死亡したのを受けて、世界各地で追悼と抗議活動が行われている。一方、中国政府は同焼身自殺行為を「姿を変えたテロ」とし、国際メディアが過大報道していると非難した。

中国四川省のアバ県では20歳のチベット尼僧テンジン・ワングモさんが17日、所属する尼寺の近くで焼身自殺を図り死亡した。彼女が手にしていたプラカードには、「ダライ・ラマ14世のチベット帰還を求める。チベットの宗教の自由を求める」と書いていた。

今年に入ってから、焼身自殺で中国政府のチベット政策に抗議する僧侶は彼女で9人目となった。そのうちの5人が死亡した。残りの4人は中国政府に身柄を拘束されてから所在が不明だ。9人は全員が10代後半と20代の若者である。

中国政府は19日、同焼身自殺の行為は「姿を変えたテロ」だと結論付け、各外国メディアが事件を過大報道していると非難した。中国外交部の姜瑜・報道官は定例記者会見で、チベット亡命仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世はこの自殺行為を擁護し、促していると発言した。

それについて、ダライ・ラマ事務所の幹部ツァイジャム氏は反論した。同氏は米VOAに対して、「ダライ・ラマ14世は一度もこのような行為を支持していないし、促してもいない。中共政権のこれらの指摘はまったく根拠のない捏造だ」と述べた。

国際社会の反響

亡くなった自殺者たちを追悼するため、インドのダラムサラにあるチベット亡命政府は現地時間19日午前8時から、寺院で祈りの法要を開いた。ダライ・ラマ14世や、亡命政府の議員たち、数千人のチベット人が祈りを捧げたほか、1日の断食を行った。

同亡命政府のロブサン・サンガイ首相は法要で談話を発表し、「焼身自殺したチベット人たちは命をかけて、チベット人が抑圧されている現状について、国際社会に目を向けるよう訴えている」と述べた。

同首相は、「中国政府がチベットを占領して60年余りの間、多くのチベット人は苦しみに耐えてきた。チベットの宗教、言語、文化、風俗習慣および自然環境も深刻に破壊されている」と述べ、中国政府に対して、チベットへの鎮圧を直ちにやめ、国際自由メディアのチベット進駐を許可するよう求めた。また、国連に対しては、現地に調査団を派遣するよう呼びかけた。

また、焼身自殺を図った後、中国政府に強制連行されて所在不明になった4人の僧侶について、同首相はその情報を公開することを中国政府に要求した。

同亡命政府は10月19日を「チベット声援デー」と定めた。

世界各地のチベット人とその支援者たちもこの日、1日の断食活動に参加した。インドの首都・ニューデリー市にあるガンジーの墓の前で、インド各地とネパールから3千人余りのチベット人は祈りの会を開き、その後、約5千人がカンジーの墓から議会ビルまで中国政府に対する抗議デモを行った。

AFP通信の報道は、四川省アバ県のチベット人僧侶の主流的な認識として、「一連の焼身自殺事件の根源は、中国政府がダライ・ラマ14世との対話を拒否しているため、チベット人が絶望していることにある」と伝えた。同報道は、ある僧侶の証言として、多くの僧侶は焼身自殺の行為に賛成しておらず、チベット人の状況を悪化させるのではと心配していると報じた。

ワシントン・ポスト紙は、「チベット社会には自殺で抗議するという習慣はないのだが、今年に入ってから9人も焼身自殺したのは、国際社会の関心を呼びかけるための最後の手段ではないか」と報じた。

米国国務省のマーク・トナー副報道官は18日の定例記者会見でこの問題に強い関心を持っていると述べ、中国政府に対して、チベットの宗教、文化、人権を尊重するよう求めた。

国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの幹部サム・ザリフィ氏は18日、中国政府はチベット人の切実な訴えに対して、強硬な態度をとっていると非難し、このような姿勢はチベットの怨恨を激化させる恐れがあると述べた。同氏は、中国政府に抗議したため投獄されたチベット人全員の釈放を求めた。

ラジオ・フランス・インターナショナル(RFI)はフランス在住の中国問題専門家・候芷明氏を取材した。同氏は、「大勢のチベット人は今、絶望的な感情を持っているであろう。なぜだろうか。彼らはわかっているのだ。ダライ・ラマ14世が帰還できなければ、中国政府との対話が永遠に進展しない。そしてチベット人の現状も永遠に変わらない。彼らの絶望感はこのような政治状況によるものである。国際社会は中国政府に圧力を講じるべきで、毅然として中国政府にこう告げるべきなのだ。『ある民族、その文化は漢族と異なっていても、それは大した問題ではない。彼らのその独自の民族文化と宗教生活を容認すべき』」と語った。

今年のチベット人僧侶の自殺事案

国際人権団体「フリー・チベット」(本部・ロンドン)の公表に基づいて、今年に焼身自殺を図った僧侶たちの事案を次にまとめた。

3月16日、四川省アバ県のキルティ僧院の僧侶ロブサン・プンツォックさん(20歳)は町で焼身自殺を図った。当時、彼は「ダライ・ラマ帰還」「チベットには自由が必要だ」と叫び、現場に駆けつけた武装警官から暴行を受け、翌17日に亡くなった。

8月15日正午、四川省カンゼ・チベット族自治州のニーツォ僧院の僧侶ツェワン・ノルブさん(29歳)は県政府の前で大量のビラを撒いた後、ガソリンを被り焼身自殺を図って死亡した。目撃者の証言によると、ノルブさんはそのとき、「チベット人は自由がほしい」「ダライ・ラマ万歳」「ダライ・ラマをチベットに帰還させて」などと叫んでいた。

9月26日、四川省アバ県のキルティ僧院の僧侶2人が焼身自殺を図った。2人の年齢は17~18歳。自殺する直前には禁止されているチベットの旗を振りながら、宗教の自由とダライ・ラマ万歳を叫んでいた。そのうちの1人は今年3月に焼身自殺をはかった僧侶プンツォックさんの弟だという。駆けつけた警官は火を消し、2人を病院に搬送したが、詳しい状況は伝えられていない。一部の報道によれば、その内の1人が死亡した。

10月3日、四川省アバ県のキルティ僧院の17歳の僧侶が焼身自殺を図った。彼は当時、手にダライ・ラマ14世の画像を持ち、チベットの宗教の権利と自由を繰り返し叫んでいた。同じく警察に連行されたが、詳しい状況は伝えられていない。

10月7日、四川省アバ県のキルティ僧院の元僧侶2人、カインさん(18歳)とチョーペルさん(19歳)が焼身自殺。2人とも死亡した。

10月15日、四川省アバ県の19歳の元僧侶は焼身自殺を図った。駆けつけた警官が消火し、彼を連行したが今は所在不明である。

10月17日、四川省アバ県で尼僧テンジン・ワングモさんは所属する尼寺の付近で焼身自殺を図り死亡した。

また、2009年2月27日、四川省アバ県のキルティ僧院の24歳の僧侶は焼身自殺を図ろうとしたとき、警察官に銃撃されて、足と右腕に重い障害を残した。いまでは軍の病院に収監されている。

(翻訳編集・叶子)
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