中国、チベットと新疆を結ぶ戦略的道路「G216」を建設中

2022/03/24 更新: 2022/04/20

中国共産党は西部チベットと新疆ウイグル自治区を南北に走る「G216国道」で結ぼうとしている。専門家は1950年代以来、最大の戦略的挑戦をインドにもたらすと指摘した。

作家でチベット専門家のクロード・アルピ氏は15日付のインドニュースサイト・ファーストポストで、G216国道について「中国メディアがあまり取り上げられていない秘密プロジェクトの一つだ」と指摘した。「1950年代初頭にインド領内にまたがり建設されたG219国道(新蔵公路)の代替となる」と語った。

G216国道は、新疆ウイグル自治区ホータン地区の管轄下にあるアクサイチン地域を通過して建設される予定だ。インドはこの地域を同国ラダック地方の一部と主張しており、中印係争地域でもある。

チベットと新疆を結ぶ現在のG219国道にとって代わる新しい道路建設は、人民解放軍にとってロジスティクスなどの面で有利になる。国境紛争で対立するインドにとって懸念材料になると、ドイツ在住の中国学者フランク・レーベルガー氏は語る。

近年の中印関係は芳しくない。2020年、中国共産党の国境インフラ建設をめぐりインドのラダック地方にあるガルワン渓谷で中印両軍が衝突。20人のインド兵士が命を落とした。

衝突の数日前、アクサイチン地域(インド呼称はラダック地方)のG219国道付近で人民解放軍の車列による数日間におよぶ渋滞が発生していたという。SNS上には車列の写真や動画が多く掲載された。レーベルガー氏は「中国共産党がラダック地方などで大規模な軍事作戦を計画していることを示す確実なサインだった」と指摘した。

「しかし、G216国道が完成すれば、中国による戦争準備を見破ることは困難になるだろう」

中国によるチベットと新疆を結ぶ道路の建設は70年前の毛沢東時代から始まった。1951年5月にこの地域の火山が噴火し、道路を建設していた多くの作業員が死亡したため、計画は中止された。

「しかし、中国の指導者たちは先人の夢を決して忘れることはない。今日、習近平国家主席の秘密プロジェクトの1つは、新疆とチベットを結ぶ新しい道路を開くことだ」とアルピ氏は記した。

G216国道は新疆ウイグル自治区内の北端に位置するアルタイ市からチベットの国境へと続く。中国の国家高速道路網計画(2013-2030)によると、さらにチベットから南下し、いくつかの国を経由してネパール国境まで道路を建設する予定だ。

レーベルガー氏によると、G216国道は、新疆の砂漠地帯であるタリム盆地などすでに開通している地域もある。

インドへの影響

アルピ氏は2018年に発表した論説で、G216国道は中央アジアとネパール、南アジアを結ぶ新しい貿易ルートのパイプになり得るため、インドに計り知れない経済的影響をもたらす可能性があると分析していた。

中国共産党は、チベット自治区ガリ地区への観光客数の増加やチベット西部への新空港建設などチベットの経済開発計画を進めている。このことは、チベット自治区が観光だけでなく経済の主要拠点や、中国国境の防衛の戦略的拠点にする狙いもあるとアルピ氏は指摘した。

(翻訳編集・山中蓮夏)

インドと南アジアの地政学を専門とする記者。不安定なインド・パキスタン国境から報道を行なっており、インドの主流メディアに約10年にわたり寄稿してきた。主要な関心分野は地域に立脚したメディア、持続可能な開発、リーダーシップ。扱う問題は多岐にわたる。