中国崑崙山の仙人(19) 妖狐(二)

【大紀元日本3月19日】

前書


本文は、私が知り合った先天道を修めた平先生(500歳)の経歴を記録したもので、文章はすべて記憶によるものである。何人かの人の記憶を統合したもの、または私と平先生の間であった途切れ途切れのいくつかの対話を元に書いたものであるため、文の繋がりがよくないと感じるところもあると思われる。私はそれらを一つに統合し、論理的な文脈を整えるため、想像を使った文字を加える場合があったが、事実を離れた記述はない。平先生との経験から、私は世の中の多くの出来事は人が思っているものとはまったく違うということが分かった。本文を読んだ後、多くの人は考え方が変わると思う。

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十一、妖狐(二)

彼女は戸口まで走ってくると、横たわったり地上を転げ回ったりしながら大声で泣き、たくさんの人が死にそうとか、たいへんな事が起きるとか、怖いことばかりを口にした。

私たちは面白いと思い、そのおばあさんから目を離さなかった。村民たちによると、彼女は隣村の巫女で、神が彼女に憑いていると言った。彼女に焼香したりお金をあげたりすると、どんな質問にも答えてくれるが、たいてい当たっているという。

神医は横目で彼女を見ると、まともなものではない、と言った。

村民たちは巫女を囲み、彼女を引きずりながら、いったいどうしたのか、何が起きるのかと聞いた。彼女は村民たちが自分を囲んで、自分の話を聞いてくれるのを見て、目で周囲を探し、私と神医を見つけると、私たちを指差した。そして、またあちこち探し続けたが、見つからなかったようだった。私は、彼女が探しているのは、おそらく平先生だろうと思った。巫女は私たちを指しながら、もう一人の仲間はどこへ行ったのかと聞いた。

私たちは誰も彼女を相手にしなかった。すると、彼女は再び跳び始め、太ももを叩きながら泣き続けた。それから、村民たちが話をとりついでくれた。彼女の話によると、彼女は先ほど神霊からのメッセージを受けたという。私たちは雷に打たれるという災いに遭い、天は私たちを殺そうとしているので、私たちがどこへ逃げても、天は私たちに落雷し続けるという。今、私たちがこの村にやってきたので、ここの全ての人に災難をもたらすに違いない、村の人は、みんな雷に打たれて死んでしまうというのだ。幸いに、村民たちは彼女の話を信じることはなく、皆笑った。数人のおばあさんだけが彼女の話を信じ、恐ろしそうに私たちを見ていた。

一方、神医は村民たちの長年の慢性病を治した。銀針に触れると病気はすぐに治り、数十年の慢性化した持病の患者二人もその場で治った。村民は皆、神医の仕業に感激し、泣いて叩頭しようとする者もいた。

神医はとても雄弁でユーモアがあり、村民たちと打ち解けていた。彼は病気を治してもお金を受けとろうとせず、謝礼として渡された小さい贈り物さえも一切断った。そのため、村民たちは皆、彼に敬服していた。

巫女は自分を相手にする人が誰もいないのを見て、呆然となった。しばらくすると、彼女は突然跳び上がり、泣き叫びながら必死に神医をつかんで、外へ引っ張ろうとした。そうしながら、口で神医を噛んだり、足で蹴ったりした。彼女の行動に村民たちは激怒した。特に神医の恩を受けた村民の家族はそうだった。彼らは巫女を神医から引離し、遠くまで引きずって、再びこの村に足を運んではいけないと警告した。

巫女は遠くまで引きずられると、地べたに座った。彼女は村民たちを指しながら、応報は夜にやってくる、それを待てばよいと泣き叫び、村を巡って走り始めた。走りがなら、大声で叫び、その様子はまるで狂人のようだった。

巫女のことで、私は気持ちが重くなり、下を向いたまま黙っていた。神医は私の手を引いて席に座らせると、明るく笑いながら、あのような人は相手にするに値しない、と話した。そう言いながら、また針を取り出して、病気の治療を続けた。そして、何事もなかったかのように村民たちとおしゃべりしたり、笑ったりした。

夕刻になり、平先生は帰って来た。彼は、私と神医を側に引き寄せ、今日、誰かが来てごたごたを起こしていないかと聞いた。神医が巫女のことを話すと、彼はうなずいた。私は、何が起きたのかと聞いた。

それによると、平先生が妖狐に会いに行ったところ、妖狐は彼と勝負しようとしたという。妖狐は、たくさんの弟子やイタチ、蛇の妖怪の仲間を呼び出し、陣立てして平先生と闘おうとした。平先生は、それらとトラブルを引き起こしたくなかったので、変身してその場を離れ、昆侖山に戻って「天雷」に助けを求めに行ったという。

私は、「天雷」に落雷するようお願いして、これらの妖怪を殺すのかと聞いた。彼はうなずきながら、もし天意が「成功」であれば、今晩にも落雷して妖怪たちを殺すことができるが、そうでなければ、他の方法を探すしかないと言った。

平先生は、私たちに村民の家で泊めてもらうようにと促し、自分は山に上って「天雷」を呼びにいくと言った。

 (翻訳編集・柳小明)