中国崑崙山の仙人(20) 妖狐(三)

【大紀元日本3月26日】

前書


本文は、私が知り合った先天道を修めた平先生(500歳)の経歴を記録したもので、文章はすべて記憶によるものである。何人かの人の記憶を統合したもの、または私と平先生の間であった途切れ途切れのいくつかの対話を元に書いたものであるため、文の繋がりがよくないと感じるところもあると思われる。私はそれらを一つに統合し、論理的な文脈を整えるため、想像を使った文字を加える場合があったが、事実を離れた記述はない。平先生との経験から、私は世の中の多くの出来事は人が思っているものとはまったく違うということが分かった。本文を読んだ後、多くの人は考え方が変わると思う。

************************************************


十一、妖狐(三)

夜半の10時過ぎであったか、天空から突然雷が落ち始めた。ここ数日はずっと晴天であったが、落ちれば落ちるほどそれは大きくなり、近づいてきた。私は、きっと平先生が雷を呼んできたのだ、今度こそ天意に沿って行っているのだから必ず成功する、と思っていた。

村民たちは驚き、慌て始めた。昼に聞いた巫女の話の通り本当に雷が現れ、こんなに響くとなると、みんな怖がっていた。村民たちは何人かのお婆さんについて、私たちが泊まっている村民の家の戸口まで駆けつけた。

神医は私の手を取り、戸口に立って、笑顔で村民たちを見ていた。村民たちは神医の恩を受けていたので、誰も口を開く勇気がなかった。2人のお婆さんが私たちを指差しながら、早くこの村から出てくれないと、みんなが雷に打たれてしまう、と言った。先頭に立って誰かが話すと、他の村民もそれにつられて騒ぎ始めた。神医はうなずき、何も言わず、私と手を繋いで村を出た。私たちが本当に村を出るまで、後ろをひそかについて来る村民もいた。

神医は私を連れて山に入り、道をゆっくり進んだ。夜道が暗くて、はっきり見えなかったが、雷が道を照らしてくれた。私たちは1時間あまり歩くと、木を探して、その下で休みを取った。

私は、村を出たので平先生が私たちを見つけられないのではないかと心配した。神医は私の頭をなでて微笑みながら、私たちが彼を見つけられないことがあっても、彼が私たちを見つけられないことはないと言った。

夜中になって雷は止まった。私と神医は木陰で寝入った。翌朝、私が目を覚ますと、神医は既に目を覚ましていた。私は彼の側で寝ていたのだが、私を起こさないようにと体を動かさなかったのだ。

なぜ平先生は私たちを探しにこないのか、彼は村に行ったのではないか、と私が神医に聞いていると、後ろから音がした。平先生が遠くないところから、木の後ろを曲がって来るのが見えた。私は喜んだ。彼は、昨日の夜、既に帰って来ていたのだが、私たちが寝入っているのを見て、声をかけなかったと言った。

私が妖狐らはどうなったかと聞くと、平先生は、妖狐やイタチ、蛇の妖怪はもう雷に打たれて死んだと言った。そして、夜中に廟に行って、「沈香屑」を手に入れたと言う。

私たちは喜ぶと同時に、心配し始めた。村民は巫女の話を信じ、私たちを妖怪と見なして村から追い出したので、再び村に入らせようとしない、村に戻ることは難しいと神医は言った。

平先生は、私たちは人を邪魔してはいけないので、少し待って、彼らが分かるようになったら、その時にまた行きましょう、これも天意かもしれない、と話した。

私たちは山の中でやきもきして過ごした。その間、山に入った村民たちは少なくなかったが、私たちを見ると、申し訳なく思ったのか、それとも、私たちを恐れていたのか、こっそり避けていた。三日目の正午の時、一群の村民たちが竹の棒に椅子を縛って、私たちに向かって歩いてきた。近づいてくると、片足でひざまずいて、私たちに礼拝した。彼らは、あの夜は私たちを勘違いし、巫女の話を妄信して、恩を仇で返してしまったので、本当に申し訳ないと言った。お詫びに、私たちを輿に乗せて担いで村に帰るので、どうか許してくださいと話した。

神医はひげを拭いながら笑った。彼は謝罪に来た村民たちを引きずって、彼らの肩を叩きながら、誤解が解けたことだけでよく、しかも私たちは道理の通じない人でもないので、このように大勢の人を動員して謝罪にくることはないと話した。神医の話に、村民たちは更にきまりが悪くなった様子だった。

それから村民たちは、彼らの「お輿」に座って帰るよう促したが、私たちは一緒に歩きがなら、おしゃべりするのがいいので、このようにする必要はないと断った。このようにして、私たちは彼らについて再び村に戻った。

帰る道中で、神医がこの二日間、いったいどんなことが起きたのかと聞いた。すると、村民たちはみんな口を開き始めた。彼らの話によると、雷が落ちたあの夜、まずは巫女が、突然口に白い泡を吐き、自分の末日が来たと言うばかりか、天に向かって叩頭しながら、自分を打たないで、と言い、言い終わると、白目をむいて、地上に倒れたという。彼女は家族によって病院に運ばれたという。

そして翌日、数キロ離れた隣村からメッセージが伝わってきたという。それによると、その村の古い木が、夜に落雷で切れてしまったが、木の中は空っぽで、1本の腕ほどの太さのある大きな蛇が雷に打たれ、木の中で死んでいたという。更に、今朝、隣村の人たちが山に上って狩猟に行ったが、お昼にもならないうちに走って戻り、たくさんの年取った狐を引きずってきたという。彼らの話によると、山中で焦臭をかぎ、探してみると、一つの焦げた狐の巣があり、中からたくさん取り出した。狐はみんな死んでいて、真っ黒に焦げた狐もあったという。これらはきっと、あの夜の雷に打たれ、死んだのに違いないと思ったが、この山では今まで狐など見たことがないので、不思議に思ったというのだ。

また、昨夜あの巫女の村から伝えられた話によると、巫女は病院に運ばれてから間もなく阿呆となり、半身不随になったという。彼女はベッドの上で身を歪めながら、笑ったり、泣いたり、口の中からよだれを流したりしながら、だれにも分からない言葉を言うばかりだったという。

それで、村民たちは夜に話し合い、私たちを誤解していたと思ったという。なぜなら、私たちはずっと雷に打たれることなく、元気でいたが、逆にこれらのものには雷が落ちたからだ。村民たちは、あなたたちはきっと仙人に違いないと言い、あれこれを聞いてきたが、神医は笑って答えなかった。

(翻訳編集・柳小明)