【大紀元日本6月8日】本書は、中央政府を驚愕させた「露営村、丁作明リンチ死事件」から始まる。
丁作明事件とは、村幹部の腐敗を直訴した露営村の丁作明が幹部らから恨みを買い、副村長の丁言楽に言いがかりをつけられ、派出所内で三人の治安部隊隊員に20分以上にわたり狂ったようにこん棒で腰や尻を叩き続けられ死亡した事件である。
しかしショッキングな事件のレポートは、まだまだ続いていく。著者の桂棣・春桃夫妻は安徽省を歩きまわり、農民の話を聞き、実名入りで本書を書いた。そのため、登場人物から訴えられてもいる。
本書に出てくる村や県の幹部の実態をあるがままに書いたら裁判沙汰になっても仕方がないと思う。幹部らの言動は役人というより、ならず者・ヤクザ・極悪人そのものである。弱い立場の農民からは様々な名目で徴税し、納税しない者には平気で暴力を振う。無理やり徴収した税金で私腹を肥やし、上層部への賄賂も賄う。自分たちで税金を決めるとは驚きだが、本当にそうなのだ。著者は取材を続けるうちに、農民に課せられた税金や費用は一体いくつあるのかという疑問に突き当たった。調べていくうちに出た結論は「誰にもわからない」ということだった。
ごく一部を紹介すると、「結婚緑化費」「晩婚保証金」「豚税」「家畜小屋費」「傷痍軍人優待費」「民兵訓練生活補助」「夫婦円満保証金」等々。ジョークとしか思えない名目の税金や費用があるが、驚くべきことに「態度費」などというのもあるという。徴収に来た役人に農民が文句をいうと、文革の時代に流行った「問題の大きさではない。態度が問題だ」との理屈をこね、態度の善し悪しを査定し徴収額を決めるという。さらには何も言わず、黙って手を差し出すだけということもあるというからあきれ果てる。
2004年1月に中国で出版された本書は、3月には発禁処分を受けた。しかし、訳者あとがきによると、推定で700万部を超える海賊版が売られているそうだ。
どうしてこんなに読まれているのか? それは中国人口13億人のうち9億人が農民という農業大国であるにもかかわらず、中国の都市生活者は農村・農民のことをほとんど知らない。そして本書に出てくる実話に多くの人が衝撃を受けたからだと思う。
日本語版はA5版に2段組みで約300ページと読みごたえがあるが、中国農民の驚くべき実態にページを繰るスピードが速くなっていく。
中国の、農村の貧しさを報道する大紀元の記事をご紹介したい。
こういう記事を読むと胸が痛む。
http://www.epochtimes.jp/jp/2005/07/html/d95799.html
書名 『中国農民調査』
著者 陳 桂棣 春桃 [著] 納村公子 椙田雅美[訳]
出版社 文藝春秋社
価格 2,900円(税込)年 2005年11月
ISBN 9784163677200
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