【大紀元日本1月17日】あくる日の早朝、ラティンバが目を覚ますと、多くの空行母が天上の各種の珍しい宝物を携えてきて祭壇に入れ、尊者を供養しているのが見えた。しばらくして、ラティンバは五体の主要な空行母が、手に何か光るものをもって祭壇から飛び出てくるのを見た。
ラティンバは、それらの出て行く神を見て突如として思った。「ああ、あれはきっと空行母が、舎利子(※1)を持っていったのにちがいない」。彼は急いでそこに駆けつけたが、すでに空行母が、舎利子をもって空中に去っていった後であった。
ラティンバはすぐに弟子たちを起こした。皆が慌ただしく祭壇に駆けつけ、中を開けてみると、果たして舎利子は何も残っていなかった。ラティンバは大変悲しんで、空行母に求めた。
「空行母様!御慈悲ですから、どうか人間の弟子たちにも舎利子を少し残してください」
「あなたたち弟子たちは、すでに殊勝な舎利を得たではないですか。法身をすでに、まじかに見たでしょう。それでもまだ満足できないというのなら、尊者に祈りなさい。自然と得られるでしょう」。「他の人たちについていったら、日月のように輝く尊者と比べたら、ホタルのような存在なのに、彼らに舎利子を与えてどうするというのです」
空行母は言い終えると、空中に停止して動かなくなった。弟子たちは、空行母の話を聴いて、少しも間違ってはいないと思い、気恥ずかしくなって後悔した。
空行母が空中で手を広げると、その手のひらから五彩の光明が放たれ、ちょうど鳥の卵ぐらいの舎利子が祭壇に落下してきた。
全ての人たちが、降ってきた舎利子を、手を伸ばしてとろうとした。すると、舎利子が突如として空中に舞い上がり、空行母の手の光の中に吸い込まれていった。すると、空行母の手中の光が二手に分かれて変化した。一つは獅子座に変化し、もう一つは、透明で瑠璃色の宝塔となった。宝塔からは、紅、黄、緑、藍、白の五色の光が発せられ、三千大千世界を遍く照らした。宝塔の周りは、一千二体の諸仏がぐるりと囲み、その中央には尊者ミラレパが座っていた。周囲では、億万の空行が海会(※2)し、供養は賛嘆するほどであった。
空行母は両手で宝塔を携え、尊者を空行の世界に迎える準備をした。このときチィカンラバは想った、「私は人間衆生のために、この宝塔を授けられるよう空行に祈り、弟子たちがそれを供養できるようにしよう」。こうして彼は、切々と求め空行に祈った。
空行母は宝塔を携え、諸大弟子たちの頭の上に飛び出した。その時、宝塔から数本の光芒が発せられると共に、弟子ら全員の頭の上にも一本の光が発せられた。
宝塔の中にいた尊者は、空へ飛び出した。尊者は空中で変化し、喜金剛となったり、上楽金剛となったり、密集金剛となったり、尊母の城壇となったり、無量の仏陀となったりして、その四周を空行母がぐるりと取り囲んだ。最後には、諸仏菩薩が光明と化し、尊者の心臓部へと溶け込んでいった。天の音楽が吹奏されるなか、尊者は諸神仏と空行に迎えられて浄土へと旅立っていった。
(※1)舎利子…舎利ともいう。成道した仏道修煉者の遺体を焼いた後に残る固形物の玉石。
(※2)海会…盛大な仏教の集会。
(続く)
(翻訳編集・武蔵)
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