1日で1億回再生、話題の大気汚染ドキュメンタリーを封鎖 

【大紀元日本3月3日】中国中央テレビ(CCTV)の元キャスターでベストセラー作家の柴静さんが作成した大気汚染の調査ドキュメンタリー「穹頂之下(碧空の下)」が大きな話題となっている。中国動画共有サイトYoukuで公開してから、1日足らずで再生回数は1億回を突破した。

 同ドキュメンタリーは、深刻化する大気汚染スモッグに関し、発生源や対応策などを探るもの。中国石化や河北鉄鋼などインフラ大手国有企業や、環境保護局や国務院発展改革党委員会、エコカーに係る違法業者を取材し、多くの関係者を実名報道した。

 現地へ赴き汚染状況を確かめ、報告書を出す官民の研究機関を取材した。精力的で果敢な映像作りのきっかけは、生まれながらにして病を持った娘の存在だという。約100万元(約1900万円)の総制作費を自己負担し、1年をかけて完成させた100分超の動画は「私とスモッグの私怨」と柴さんは語る。

 2014年、スモッグに覆われる日は175日間に達するほど、中国の大気汚染は深刻化した。中国環境保護省によると、大気汚染は中国全土の4分の1、全人口の半数近い6億人へ影響を与えたという。娘の病気とスモッグと関連を疑った柴さんは「記者の良心と母親の責任感」から環境問題に取り組むようになった。

 一党独裁政権下で強い情報検閲の敷かれる中国では、こうした社会の暗部を照らす報道を行えば、拘束や逮捕など不当処罰が加えられる可能性がある。これを踏まえての映像公開は勇気ある行為として、ネットを中心に各界で賛辞が巻き起こった。

 新任の陳吉寧・環境保護相は、大気汚染問題を正面から切り込んだ柴さんに謝意を伝えた。しかし、反響の大きさのためか、中国中央宣伝部は国内メディアに対し、ドキュメンタリーを過度に宣伝しないよう通達し、すでにドキュメンタリーの評論記事や映像のリンク先の削除が行われている。

 柴さんは1976年山西省生まれ。長沙大学を卒業後、地方ラジオ局に務めた後、国営の中国中央テレビ(CCTV)に入社。人気情報番組「東方時空」の司会を担当したことで全国的に有名になった。2012年、SARSや四川大地震の取材体験を記した著書『看見』が150万部を超えるベストセラーになった。結婚と出産のため、CCTVを退職した。

 

(翻訳編集・王君宜)

 

関連記事
中国で火災頻発。「給料を支払ってもらえない労働者による放火」と伝えられることも多い?
またもおから工事(手抜き工事)?学校教室の天井が崩落、その時生徒は?
中国は武器輸出を通じて地政学的影響力を拡大しているが、米国は、ウクライナへの武器輸出阻止や先端技術のアクセス制限を通じ、中国の軍需産業に圧力をかけている。世界の武器市場における競争は一層激化している。圧倒的な首位を維持する米国と、追い上げを図る中国。その行方を探る。