【佛家故事】 美しさも愛情も 人生は無常

【大紀元日本5月7日】ある所に一人の長者がおり、彼の息子の妻は息を呑むほどの美人であった。息子は美しい妻のそばを一刻も離れようとせず、毎日を暮らしていた。

ある日、国の交通の要路が壊され、他国の人々が入ることができなくなり、隣国との付き合いも中断した。こんな状態が12年も続き、とうとうこの国の物品が極度の欠乏状態に陥った。

12年が経過し、長者は外国の多くの商人たちが隣国に集まり、交易も活発であることを知った。長者は息子に言った。「外国の商人が隣国で商売をしているということは、きっと多くの物品が集まっているのだろう。息子よ、すぐに小道を通って隣国に行き、必需品を買ってくるのだ」。息子は愛妻と離れるのを嫌がり、親友に愚痴をこぼした。「父は年老いて、若者の恋愛感情を分っていない。私は妻から一歩も離れたくないのに、父は私を隣国へ行かせようとする。妻と離れることを思うと、悲しくて耐えられない。妻と離れるならば、むしろ川に身を投げて、または山から飛び降りて死んでしまったほうがましだ」

親友は言った。「君の考えは間違ってはいないか。親は苦労して子を育て、子供は大人になったら外で働き、親孝行をするのは当然のことじゃないか。君の考え方はわがままで、自分のことしか考えていない。働きもしないで、安逸をむさぼってばかりでは親不孝だ」

親友の話に彼は納得し、いやいやながら隣国へ行った。しかし、どこに行っても妻の姿が脳裏に焼きついていた。彼は急いで買い物を済ませて帰国した。家に着くと「妻はどこだ?」と聞いた。下女は、「奥様は別の部屋で、一人でお休みになっています」と言って、奥の部屋へ案内した。

美しかった妻は、彼が隣国へ行っている間に、重度の皮膚病を患い、全身に吹き出物ができ、うみが流れるようになった。皆からは敬遠され、仕方なく奥にある部屋で住むようになったという。

彼が慌てて見に行くと、妻は全身が黒く、醜く、変わり果てた姿になっていた。彼は、今までの妻への愛情が嘘のように一気に冷めていくのが分かった。その瞬間、彼は世間の無常を感じ、美しさも愛情も変わるものであることを悟った。

 (翻訳編集・蘭因)