キキョウ科のツリガネニンジン(釣鐘人参)やトウシャジン(唐沙参)の根は、南沙参(なんしゃじん)として漢方薬に用いられます。これらの根にはイヌリンやサポニンといった成分が含まれており、気管や気管支に溜まった痰の除去や、咳を鎮める作用があります。補陰(滋潤)作用もあるため、麦門冬(ジャノヒゲの根)や玉竹(アマドコロの根)などとともに益胃湯(えきいとう)に配剤され、脱水傾向の口渇や咳の症状に用いられることも多い薬草です。また、慢性肝炎などで喉が渇いたり皮膚が乾燥したりする場合には、地黄(じおう)や川楝子(せんれんし)などとともに配剤された一貫煎(いっかんせん)という処方を用います。
日本ではツリガネニンジンやトウシャジンを「トトキ」と呼び、食用にしています。春には新芽を軽く茹でておひたしに、秋には掘り出した根からひげ根を取り除き、茹でて油で炒めて食べます。粘膜を刺激するサポニンが含まれるため、茹でた後、水にさらすのが調理のポイントです。
(吉本 悟)
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