北京の人民大会堂の前を警備する公安当局。2013年撮影 (Mark RalstonAFP/Getty Images)
習近平政権のトラ刈り

反腐敗に「逃げ道」なし=人民日報が汚職官僚にシグナル

 人民日報は9月28日付けの「反腐敗の道に華容道(逃げ道)なし」と題した記事を発表した。習近平政権の腐敗官僚に対する強固な態度をあらためて示す格好だ。特に、最大の敵対勢力で「大トラ」と揶揄される江沢民元主席と一派に対する警告と見られている。

 同紙は論説のなかで、賄賂の罪で紀律検査委員会から追われ、国外逃亡を試みたものの失敗した国土資源局長・安家盛氏の例を挙げた。安氏は出国申請を却下され、自首した。文章は、安氏の例により汚職官僚に対して「自首以外の選択肢はない」「(逃走できるという)偶然を期待するものは、もはや救いようがない」などと、強く警告した。

 中国共産党の機関紙・人民日報は、今年の8月10日にも、元指導部による「長老」支配体制を批判する論説を出した。

 時事評論家・唐靖遠氏によると、江元主席は、習氏を国のリーダーに就かせたことに「恩義がある」と吹聴し、自身の傀儡(かいらい)と見下していたという。また、クーデターで現政権を倒し、江一派の路線を実行する、薄煕来・元重慶市トップを主席に就かせることを、習氏の主席就任前から画策していたと分析する。

 習氏に対しては、敵対勢力の政変計画や暗殺計画が、海外の中文メディアでしばしば報じられる。牙をむき出しにする江一派に、習政権は「トラもハエも一網打尽」と銘打った反腐敗キャンペーンで応酬する。

 7月、江一派で軍の制服組トップを10年務めた郭伯雄・前中央軍事委員会副主席に、無期懲役刑がくだった。同じく徐才厚・前中央軍事委員会副主席(故人)も「重大な規律違反」で、党籍を失った。

 元最高指導部メンバー周永康・前党中央政法委員会書記にも6月、無期懲役の判決が下った。江氏の庇護をうけて、石油開発利権で巨万の富を得て、さらに警察・公安の権力を使い、江氏が指示した法輪功弾圧をいっそう強化させた。

 このたびの「逃げ道なし」の論説は、習政権が江一派に出した「最後通牒」とみられている。

(翻訳・張楊/編集・佐渡道世)

関連記事
2023年5月25日に掲載した記事を再掲載 若者を中心に検挙者数が急増する「大麻」(マリファナ)。近日、カナダ […]
中国共産党が7月に反スパイ法を改正し、邦人の拘束が相次ぐなか、外務省が発表する渡航危険レベルは「ゼロ」のままだ。外交関係者は邦人の安全をどのように見ているのか。長年中国に携わってきたベテランの元外交官から話を伺った。
日中戦争の勝利は中華民国の歴史的功績であるが、これは連合国の支援を受けた辛勝であった。中華民国は単独で日本に勝利したのではなく、第二次世界大戦における連合国の一員として戦ったのである。このため、ソ連は中国で大きな利益を得、中共を支援して成長させた。これが1949年の中共建国の基礎となった。
香港では「国家安全法」を導入したことで、国際金融センターとしての地位は急速に他の都市に取って代わられつつある。一方、1980年代に「アジアの金融センター」の名声を得た日本は、現在の状況を「アジアの金融センター」の地位を取り戻す好機と捉えている。
米空母、台湾防衛態勢に 1月29日、沖縄周辺海域で日米共同訓練が挙行された。日本からはヘリコプター空母いせが参 […]