人民日報は9月28日付けの「反腐敗の道に華容道(逃げ道)なし」と題した記事を発表した。習近平政権の腐敗官僚に対する強固な態度をあらためて示す格好だ。特に、最大の敵対勢力で「大トラ」と揶揄される江沢民元主席と一派に対する警告と見られている。
同紙は論説のなかで、賄賂の罪で紀律検査委員会から追われ、国外逃亡を試みたものの失敗した国土資源局長・安家盛氏の例を挙げた。安氏は出国申請を却下され、自首した。文章は、安氏の例により汚職官僚に対して「自首以外の選択肢はない」「(逃走できるという)偶然を期待するものは、もはや救いようがない」などと、強く警告した。
中国共産党の機関紙・人民日報は、今年の8月10日にも、元指導部による「長老」支配体制を批判する論説を出した。
時事評論家・唐靖遠氏によると、江元主席は、習氏を国のリーダーに就かせたことに「恩義がある」と吹聴し、自身の傀儡(かいらい)と見下していたという。また、クーデターで現政権を倒し、江一派の路線を実行する、薄煕来・元重慶市トップを主席に就かせることを、習氏の主席就任前から画策していたと分析する。
習氏に対しては、敵対勢力の政変計画や暗殺計画が、海外の中文メディアでしばしば報じられる。牙をむき出しにする江一派に、習政権は「トラもハエも一網打尽」と銘打った反腐敗キャンペーンで応酬する。
7月、江一派で軍の制服組トップを10年務めた郭伯雄・前中央軍事委員会副主席に、無期懲役刑がくだった。同じく徐才厚・前中央軍事委員会副主席(故人)も「重大な規律違反」で、党籍を失った。
元最高指導部メンバー周永康・前党中央政法委員会書記にも6月、無期懲役の判決が下った。江氏の庇護をうけて、石油開発利権で巨万の富を得て、さらに警察・公安の権力を使い、江氏が指示した法輪功弾圧をいっそう強化させた。
このたびの「逃げ道なし」の論説は、習政権が江一派に出した「最後通牒」とみられている。
(翻訳・張楊/編集・佐渡道世)