文・中原

軍改革 天下分け目の一戦

軍隊は中国共産党権力の枢要だ。毛沢東から江沢民まで軍の絶対支配権を握るために、軍の既得権益にタッチせず、極力宥めなければならなかった。

しかし、習近平の時代になると、軍に対する因習的な懐柔政策が一変した。習氏は軍の大物を多く斬った上、禁断の領域とされる軍の改革も敢行した。

新華社通信によると、11月24日から26日まで、中央軍事委員会の軍改革工作会議が北京で開催され、軍改革の日程と計画が決まった。

海外メディアによると、新しい中央軍事委員会は、一つの本部、三つの委員会(規律検査委員会、政法委員会、科学技術委員会)、三つの局(国際軍事合作局、総務管理局、会計検査局)六つの部(総参謀部、政治工作部、訓練管理部、国防動員部、連合保障部、装備発展部)からなっている。それぞれの部門は近日に相次いで組織され、官職交替も行われる。習近平主席は、12月末までに各部署の改組を完成し、来年から新軍事委員会が発足するようと命令した。そして、軍委主席の命令に無条件に服従しなければならないと付け加えた。

陸軍や戦略支援軍を含め、各重要部署の人事もあらかた決まったという。

軍改革の注目点は、組織の大改組と機能の抜本的な改定だ。例えば、元の七大「軍区」を撤廃し、東・西・南・北・中の五「戦区」を新たに構築することや、米国式の合同参謀本部制度を導入するなどが目の付け所だ。

習氏の軍改革は、決して形式上の変動や内容の部分的修訂ではなく、旧ソ連から継承した古い軍制を打ち壊し、毛沢東から一貫してきた軍の理念を廃棄したものだ。いわば、古い体質を切り捨て、斬新な軍隊を打ち立てたのだ。

習氏の腐敗撲滅は無期限に継続するとは思われず、それはただ最終の目標達成の手口にすぎない。軍改革もそれの一通過点だが、天下分け目の一戦なのだ。

軍改革により、習氏が江沢民勢力を打撃、殲滅すると共に軍の絶対支配権を手にすることは、論をまたない。実質的には、共産党が軍を指揮するという呪縛も密かに解かれ、将来、軍隊の国家化のための地固めにもなるのだ。

67年間で築かれてきた牢固たる牙城がいったん崩れれば、共産党体制の礎が揺らぎ、それの連鎖反応として政局が覆るような激変がいつ起きても不思議ではない。ただし、枢要が治まれば、奏されるのは哀歌ではなく凱歌になるはずだ。

関連記事
中国では資本逃避が続き、2024年には2540億ドルに達した。政府の厳しい規制や経済的問題、さらに台湾問題が資本流出を加速させている。政府の短期的な刺激策も信頼回復には不十分で、今後も資本流出と投資低迷が予想される
中国共産党軍内で権力不和が生じ、指導部の不安定さが明らかになっている。米国はこの動きを把握し、空母展開を調整しながら、中共軍の脆弱性を活用する戦略を取っている。米中の軍事衝突のリスクは抑えられているが、アメリカ軍は依然として警戒を続ける
1937年、盧溝橋事件が発生し、日中戦争が泥沼化してゆく中、北京近郊の通州で日本の民間人225人(朝鮮人111名含む)が虐殺される事件が起こった
北朝鮮がロシアのウクライナ戦争に兵士を送ることで国際的な緊張が高まり、戦局への影響が注目されています。1.2万の北朝鮮軍が訓練後、ロシア東部へ到着し、ウクライナ侵攻に参加することが予想されている。北朝鮮は兵士の命を金と武器と引き換えにする。この北朝鮮の動きは, NATOの参戦を含めた拡大を暗示する。北朝鮮とロシアは諸刃の剣で自らを貫くかもしれない。
日本はアメリカが自国の核兵器を利用して、核兵器を持たない日本を防衛するかどうか懸念している。