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戦闘機マニアが見過ごしがちな全てを支配する重要な性能パラメータは何か

2024/12/19 更新: 2024/12/19

 

「重要なのは、保有している航空機の数ではない。どれだけ多くの航空機を飛ばせるか、それらに何ができるか、そしてどれだけ長く飛行させ続けられるかである」

 

 – ロバート・S・ダドニー、『エアフォース』誌元シニア・エディター。

戦闘機マニアは、最高速度、旋回率、ペイロード、迎角、レーダー断面積、ロールレートなどの統計について議論するのが好きだ。あまり議論されないが、戦闘機にとって最も重要な特性は、一定期間内に特定の航空機や艦艇が出撃できる回数を示す出撃生成率SGR: Sortie Generation Rate)である。

軍用航空では、出撃は個々の航空機の任務であり、航空機が離陸したときに始まり、着陸したときに終わる。例えば、6機の航空機が参加する1つのミッションは、6回の出撃となる。具体的には、一機のF-16が敵の地上目標を攻撃するために離陸し、攻撃を終えて基地に帰還すれば、1回の出撃を終えたことになる。F-16が目標を攻撃せずに終わっても出撃したことになる。

SGRとは、一定期間に安定して維持できる出撃回数のことである。典型的な期間は24時間である。ある飛行機が、あるSGRをより長い期間、例えば1週間や1か月にわたって維持できる場合、それはしばしば持続SGRと呼ばれる。

 

影響する要因 (編者追記 AIより)

  1. 整備時間: 機体のメンテナンスや修理の効率。
  2. 補給能力: 燃料や武器の補充スピード。
  3. 搭乗員の準備: パイロットや乗員の待機状況。
  4. 基地の運用能力: 滑走路や発進設備の可用性。

SGRが高いほど戦闘力が高い

要するに、SGRがより高い機体は、滞空時間や作戦行動半径は同等だが、飛行回数が少ない機体よりも、より多くの時間を空中で過ごすことができる。他のすべての能力がほぼ同等であると仮定すると、SGRが著しく高い飛行機は、他の飛行機が駐機場や格納庫にいる間、実際に空中にいるため、より総合的な戦闘力を提供することになるという。

最新で最高の戦闘機は、書類上では優れた能力を持つかもしれないが、実戦での戦闘力を提供するかどうかは別として、高度で最先端の技術を搭載しているため、「それほど高度ではなく」信頼性の高い機体よりもはるかに多くのメンテナンスが必要になる、ということはよくあることだ。その結果、最も複雑な機体のSGRは、複雑でない信頼性の高い機体よりもはるかに低くなり、その結果、実戦での戦闘力は低下する。そしてもちろん、より信頼性の高い航空機は、一般に時間当たりの飛行コストが低い。

高SGR戦闘機は、より熟練したパイロットを可能にする

高SGR機は信頼性が高く、飛行時間あたりのコストが低いため、パイロット訓練に使用できる操縦時間(コックピットにいる実際の時間)が長くなり、優れた訓練が可能になる。そして、より訓練された/より熟練したパイロットは、飛行機/パイロット・システムにとってより大きな戦闘力となる。

そこで、同じようにサポートされている2つの異なる機体があるとして、低SGR機は高SGR機より20%高い理論上の基本戦闘力を持っているとしよう。

パイロットも、高SGR機のパイロットは、高い熟練度を維持するのに十分な月30時間という時間、操縦桿を握っており、低SGR機のパイロットは、機体に慣れ親しむ程度の月10時間くらいしか、操縦桿を握っていなかったとする。

月30時間の操縦時間に恵まれたパイロットは、相手機の長所を打ち消しつつ、自分の機体の長所を、最大限に生かすように設計された戦術を訓練してきたと仮定することができる。

要するに、月に30時間の操縦時間を確保しているパイロットは、訓練や技能がはるかに劣るパイロットが操縦する低SGRの航空機が持つ書類上の優位性を、容易に打ち消してしまうほどの大きな戦闘上の優位性をもたらすだろうということだ。

SGRの高い航空機を使ってより多くの訓練を可能にし、より熟練したパイロットを生み出すことの重要性は、過大評価することはできない。一般的な訓練の重要性について、3千時間以上の飛行時間を持つ退役米空軍パイロットのトム・チャック・ノリス中佐は、「月に10時間から15時間は、航空機に慣れ親しむには十分だが、熟練度を維持するには十分ではない」と述べている。

より多くの出撃回数とより熟練したパイロットの組み合わせは、実戦力に相乗効果をもたらす強力な組み合わせである。悲しいことに、国防総省が開発した最後の2大戦闘機であるF-35とF-22は、どちらもSGRの低い機体である。これはつまり、操縦する者に高い熟練度を維持する機会を与えられないだけでなく、SGRが低いため、その存在の大部分を駐機場や格納庫で過ごし、戦闘力をゼロにすることを意味する。

これは、今後も戦闘力がゼロになると言っているのではなく、もしSGRが設計時にすべての主要性能パラメータを支配する1つの主要性能パラメータであったなら、もっともっと良くなっていたはずだということだ。

 

国防改革を中心に軍事技術や国防に関する記事を執筆。機械工学の学士号と生産オペレーション管理の修士号を取得。
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