「休暇シーズンの戦略」 中国新型航空機が明かす意図と技術力

2025/01/15 更新: 2025/01/15

論評

中国の航空業界は2023年12月26日、既存の第5世代戦闘機「J-20」とは異なる新型ステルス戦闘機に似た機体を公開し、国際的な議論を引き起こした。

その後、尾翼のない2種類の機体の写真がソーシャルメディア上で拡散され、飛行試験が行われているとみられている。しかし、データ不足や軍事機密の性質から、これらが第6世代戦闘機に該当するかどうかについては専門家の間で慎重な見解を示している。

2024年のアメリカ防総省の中国の軍事動向に関する報告書によると、中国軍(PLA)は超音速中・長距離ステルス爆撃機と並行して、亜音速(音速よりも遅い速度)の戦略爆撃機「H-20」の開発中に取り組んでいる。この新しいデザインは、冷戦時代のアメリカ「F-111」やソ連「Su-24」を彷彿とさせるものの、現代のステルス技術が組み込まれている可能性が高い。

中国政府がこれらの新型機を公開した目的の一つは、アメリカにおける中国の第6世代戦闘機プログラムに関する議論を活性化させ、米軍の優位性に対する疑念を引き起こすことだと考えられる。また、これによりワシントンの軍事戦略や予算配分を見直させる狙いもあるという。

新型機の特徴と技術的評価

12月26日に公開された1機目の航空機は、J-20と並んで飛行しており、やや大型でデルタ翼を備え、尾翼がないのが特徴である。広いキャノピーから有人機であると推測され、胴体両側のエアインテークのほか、コックピット後方にもインテークが配置されていた。これにより、一部の専門家はエンジンが3基搭載されている可能性を指摘する一方、冷却や赤外線低減が目的との見方もある。

この機体は、J-20を超えるステルス性、長距離性能、高速性能、積載能力を備えている。しかし、第6世代戦闘機として断定するのは時期尚早であり、むしろ旧型の戦闘爆撃機「JH-7」の後継機として位置づけられる可能性が高い。

アメリカ国防総省の報告書によると、長距離巡航ミサイルを装備したこれらのステルス爆撃機は、中国の戦略的影響力を拡大し、台湾海峡や南シナ海、東シナ海といった地域で緊張を高める可能性がある。

同日に公開されたもう1機の航空機は、小型で不鮮明な写真から詳細は不明であるが、瀋陽航空機製造公司(Shenyang Aircraft Corporation)の開発した可能性がある。一方で、大型の尾翼なしの機体は成飛(Chengdu Aircraft Corporation)のプロジェクトとみられ、「36」という番号が記されていたことから、海外メディアでは「J-36」と呼ばれている。

2022年、米空軍司令官のマーク・ケリー大将は、中国がアメリカの「次世代航空優勢(NGAD)」プログラムと同様の技術開発を進めていると指摘している。NGADでは、レーダー低視認性、AI支援センサー、高度なフライトコンピューター、オープンアーキテクチャシステムを備えた有人戦闘機を開発中だ。

第6世代戦闘機への課題と米中の比較

現時点で、この新型機が第6世代戦闘機の試作機か、それとも新技術の実験用モデルに過ぎないのかは不明だ。中国は長年にわたりさまざまな有人戦闘機の実験を行っており、その中には新装備やシステムを試すための小規模および実物大の模型も含まれている可能性がある。

AI駆動システム、低コストのステルス素材、新世代エンジン(継続的な超音速飛行や未来型兵器の駆動に必要)など、真の第6世代ジェット機の多くの中核機能は、いまだ秘密にしている。

写真の「流出」が休暇シーズンの前後だった点から見れば、それは意図的な戦略とみられる。米空軍の次世代機プログラムは、デジタル設計手法の進化により物理的な試作機の必要性が低減し、試験飛行はほとんど公にしていない。

一方、中国は高性能ターボファンエンジンの製造苦戦しているものの、ロシア製エンジンから国産モデルへの切り替えを進めている。

もしこの新型機が超音速ステルス爆撃機であれば、西太平洋における米軍基地への脅威が高まる。特に沖縄や米領グアムに駐留する米軍、さらには台湾を支援する部隊にとって、重大な挑戦となる可能性がある。

超音速の速度を持つこのような航空機は、レーダーからより容易に逃れたり、探知された後でも迅速に脱出できる可能性がある。これは、低速な爆撃機にはない大きな利点である。

カナダを拠点とする記者。アジア太平洋ニュース、中国のビジネスと経済、米中関係を専門としている。
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