英国に生息する155種の蛾や蝶の分布や数が1970年代に比べてどのように変化したかを分析したところ、気候の変動に伴い増加したもの、逆に希少化したものがあることが判明した。
市民参加の科学プログラムを通して数千人のボランティアがデータを収集した結果、研究チームは最近の気候変動への反応が種によってかなり開きがあると断定した。Science Advances誌に発表された報告では、それぞれの種にとって、気候変動のインパクトの違いが様々であることを示している。
「それぞれの種(しゅ)は、気候変動における異なる側面に敏感なため、変化への反応も異なります」と英ヨーク大学生物科の主任執筆者・共同研究者のジョージナ・パーマー氏は語る。
「数の変化のほぼ3分の2は、特定の種に限られた異なる性質から説明できます。つまり、特定の種の気候変動への反応は、これまで認識されてきた以上に予測することが可能であるというわけです」
データ集計の結果、気象変化に敏感な蛾の種である三重茶紋(Treble brown spot:Idaea trigeminata)と蝶の種である斑紋木蝶(Speckled wood butterfly:Pararge aegeria)が分布領域および数の面で最大の増加を見せていた。気象変化がこの二種には適合していた。
逆に、蝶の灰色セセリチョウ(grizzled skipper butterfly:Pyrgus malvae)(表題写真)と、蛾の長月キリバエダシャク(September thorn moth:Ennomos erosaria)および蛾のカラスヨトウ mouse moth (Amphipyra tragopoginis)は気候変動を環境の悪化として受け止めており、数と分布領域は減少していた。
「種の分布と数は気象から影響を受けることは分かっています。排気ガスを減らすなど気候変動を抑えるための措置を取らなければ、これらの影響が衰えることはありません」生態学・進化を専門とする共同執筆者ジェーン・ヒル教授は語る。
「我々の研究は、気候変動に最悪に反応している種に重点をおいて保護活動を進め、今後も存続するよう支えていくことを可能にします」
蝶類保護の機関で記録主任を務めるリチャード・フォックス氏はさらに次のように述べる。「この研究を通して、気候変動に好適に反応する傾向のある種と脆弱になりやすい種とを見定めることができます」「寒くて雨量の多い英国に、地球温暖化は短期間でもほとんどの蝶類や蛾類に好条件をもたらすのではないかという環境保護者の従来の見解を覆すもので、すでに多くの種が減少の一途を辿っていることを示唆しています」
ヨーク大学生物学科のクリス・トマス教授は、さらに次のように加えている。「これら155種の蛾や蝶は、気候変動の度合いに対して、ほぼ155におよぶ異なる『意見』を提示し、環境が良くなったか、悪くなったかを示しています。気候変動は、野生の動植物に実に大きな変化をもたらしています」
原文:Futurity
(翻訳編集・鶴田)
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