「糖尿病大国」中国、2025年の治療薬市場は2.6兆円
中国の糖尿病人口は1億1千万人を超え日本の全人口に匹敵し、糖尿病予備軍も5億人と言われている。世界の製薬会社はこの巨大な市場に注目し、積極的な投資を進めている。ある市場調査によると、2025年には中国の糖尿病治療薬の市場規模は230億ドル(2.6兆円)にふくらむという。
上海交通大学医学部が2013年に米国医師雑誌(JAMA)に発表した調査内容によると、糖尿病と強く疑われる「糖尿病有病者」の数は、中国では1億1390万人と見積もられた。2040年には1億5100万人に達すると、国際糖尿病連合が推計している。さらに成人の2人に1人が糖尿病予備群だという。
インシュリンなど治療薬の需要が高まるとの予想から、市場関係者は、製薬メーカーによる5千万人におよぶ中国の未診断・未治療の糖尿病人口とその予備群の「奪い合い」が始まっていると米市場情報メディア「マーケットウォッチ」に話している。
マーケットウォッチが伝えた、世界最大のインシュリン・メーカー「ノボ・ノルディスク(Novo Nordisk)」の中国担当ジェイコブ・リース氏の話では、糖尿病有病者の約半数は糖尿病と診断されたが、そのうちのわずか15%しか医療処置を受けていない。
ノボ・ノルディスク、イーライリリー、サノフィ、メルクら世界の製薬大手はそれぞれ、販売、マーケティング、製薬生産設備など、中長期的な計画で、中国へ大規模な投資を行い、市場占有率を高めようとしている。
例えば、数百万人の有病者がいるとされる「未開の」地方都市では、中国企業と提携して製品促進と医療スタッフとの関係を築くなど。サノフィは7月、浙江省の製薬会社・海正薬業と合弁会社を作ると発表した。マーケットウォッチによると、ノボ・ノルディスクやイーライリリーは、糖尿病知識の普及と指導に取り組む政府の医療部門関係者と緊密な連携をしているという。
市場調査会社ビジョンゲインは、2015年の中国の糖尿病治療薬の市場規模は約51億2000万ドルと見積もり、その後は毎年10%増加して、2020年には87億ドルに達する。2025年には、糖尿病薬の市場は230億ドルになると予測した。
上海交通大学医学部によると、中国の糖尿病有病率は1980年にはわずか1%以下だったが、2010年の全国調査では11%を超えた。2000年代以後の経済成長にともない、生活水準が向上し、食生活やライフスタイルが大きく変化し、運動不足や肥満が増加。大都市の重度な大気汚染も、肥満を助長し、糖尿病有病率の大増加につながったと健康専門家はみている。
(翻訳編集・佐渡 道世)