【大紀元日本8月11日】明の時代(1368-1644)、羅倫(ラ・リン)という男がいた。彼は科挙の試験を受けるため、地方の山から首都へ向かっていた。山東省を旅している時、お供をしていた童子が、金色に輝く腕輪を道で拾った。童子は羅倫に一言も告げず、そっと自分が持っている荷物にしまっておいた。数日後、羅倫はふと自分が持っている金銭を勘定し、残りの旅路に足りるかどうかと案じた。
童子は羅倫に伝えた。「数日前、私は金の腕輪を拾いました。それを質に入れれば、お金は十分に足りるでしょう」
羅倫はそれを聞くと、厳しい顔つきになった。彼がその腕輪を持ち主に返すべきだと言うと、童子は旅の日数を指で数えながら、「また山東省へ戻っていたのでは、とうてい科挙には間に合いません」と申し訳なさそうに言った。
羅倫は言った。「この腕輪は、どこかの家の使用人がなくしたものに違いない。主人に見つかれば、その使用人の命が危ない。誰かの命を助けることができるのなら、私は科挙を受けなくてもかまわない」
二人は、山東省へ引き返し、まもなく金の腕輪の持ち主が見つかった。羅倫の予想していた通り、腕輪は使用人が水を流していた時に、誤って地面に落としたものだった。その女主人は使用人を責め、盗んだに違いないと断定し、使用人をムチ打っていた。使用人は身に覚えのない罪を着せられ、何度も自殺しようと考えていた。
一方、腕輪がなくなったことを知った主人は、妻が勝手にそれを他人に与え、その罪を使用人になすりつけようとしていると思い込んでいた。主人は妻に疑いの目を向け、厳しく追及した。妻は憤り、自殺しようと考えていた。
羅倫が腕輪を返したことにより、二人の命が助かった。この一件に関わった全員は、羅倫に心から感謝し、彼が科挙に合格することを祈った。羅倫はすぐに首都へと出発し、科挙の試験にはどうにか間に合った。彼は無事に合格し、状元(首席)になったという。
(翻訳編集・郭丹丹)
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