金魚の王様 蘭鋳(らんちゅう)
最近では、ペットショップであまり見かけなくなりましたが、2、30年前は一匹数万円~数十万円で販売されていた高価な金魚です。今では愛好家も増え、環境さえ整えれば簡単に繁殖させることができるようになりました。
金魚が江戸時代に中国から伝えられてきたことを、ご存知の方は多いと思います。よく時代劇で「きんぎょ~~え、きんぎょ~~」と金魚屋さんが下町で声を張り上げながら売っている場面を見ます。金魚はその頃から庶民に愛されていたのですね。
「らんちゅう」と聞いてどのような姿を思い浮かべますか?
一般的には、「体つきが丸く、頭部の肉瘤が発達し、背びれはなく、尾は小さめ」。この金魚は和金からの改良品種で、背びれの無い「まるこ」から作られた金魚なのだそうです。
その後らんちゅうは、系統ごとに愛好家によって育てられるようになりました。力強く太みのある体型と尾形を重視した泳ぎの美しい「協会系」。身体は小さく肉瘤が発達していて、色彩の鮮やかな「宇野系」や「京都筋」。この系統は一池に数百匹で飼育して小さく小さく育てるようです。その群生は、まるで泳ぐ宝石を見ているよう。その他に「大阪らんちゅう」という種類もありますが、現在は数が減り、保存に力を入れているそうです。
らんちゅうは「上見の金魚」と言われていて、らんちゅう用の水槽は普通の水槽の半分の高さで30センチ。あまり深いと水圧で肉瘤が小さくなってしまいます。また、上から見ることで個体の美しさや、粋な泳ぎを見ることができます。そのためモルタルで自作した「たたき池」や「プラ舟」などで飼育している人もいます。
江戸時代ではこの蘭鋳という金魚のみ、お殿様が好んで飼育をされていたのだそうです。もちろん管理は家臣の仕事だったそうですが…。
お殿様は優雅に泳ぐらんちゅうを愛で、日頃の疲れを癒されていたのかもしれませんね。
(文・ こずえ)