中国では格差により貧困者数が5億人に達している(Getty Images)
中国国内で拡がる格差

「育てるのはもう無理」貧困を苦に孫を殺害 中国全土に広がる貧富の差

極度の貧困により、幼い命が失われた。山西省で生活苦に悩んだ祖母が8歳の孫をハンマーで撲殺するという事件が起きた。中国では今年8月、甘粛省でも同様の事件が起きている。中国大陸の貧富の差はますます広がり、特に農村部の貧困は極限状態に達しているようだ。

香港の広東語メディア、東方日報が10月3日に報じたところによると、9月17日早朝、52歳の女性呉氏は、夫が外出したすきにハンマーで孫の頭部を数回にわたり殴りつけ死亡させた。女性はその後逃亡したが、その日の夕方に逮捕された。孫に両親はおらず、この女性は孫の母方の祖母にあたる。女性は、自身とその夫は年齢的に、8歳の孫を養育することはできないと将来を悲観していた。生活は困窮を極め、家族3人で肩を寄せ合うようにして暮らしていたという。

この家族は村の中で最も貧困な家庭であり、この2年余り、一家の収入は1年あたり千数百元の生活保護だけだった。昨年の孫の小学校入学に伴うスクールバスの送迎費や制服の購入といった度重なる出費と、年間1800元(約28,000円)の学費の支払いが、一家の家計に重くのしかかっていた。

呉容疑者は、孫を可愛がっていたがこれ以上育てるのは無理だと将来を悲観し、孫を養子に出そうと夫に再三もちかけていが、夫は首を縦に振らず、呉容疑者も孫の養育者を見つけることができなかったため、いっそ殺した方がましだとまで思い詰めていたという。

中国メディアの報道によると、甘粛省で8月26日、28歳の女性楊氏が村役人の不正により行政からの生活補助を打ち切られたことを悲観して、子供4人を斧で殺害した後、自身も服毒自殺したことが報じられた。女性の入り婿も葬儀を済ませた後に服毒自殺したため、四世代が同居していた8人家族のうち、6人が死亡した。

この2つの事件は、いずれも極度の貧困によりもたらされた絶望から起因のように見えるが、根源にあるのは各行政部門の無関心と職務怠慢にある。習政権になって徹底した汚職官僚取締りがすすめられているものの、前の江沢民、胡錦濤政権時代までに腐敗は末端まで蔓延っており、なかなか根絶できないようだ。

BBC放送は、中国大陸の貧困者数が5億人に達しているという国連データを挙げ、中国大陸の貧富の差が拡大を続けており、特に農村部は危機的状況であるに置かれていることについて、非常に憂慮すべき事態だと報じている。

 

(翻訳編集・島津彰浩)

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