華人圏では「謎の失踪を遂げたパイロット」のニュースが話題になっている。
監視カメラは故障中で、何の確証もないが、それでも「臓器狩り被害に遭ったのでは?」とする憶測が飛び交っている。
大量の失踪者、そして臓器を抜かれた変死体。いまでは中国国内の人も世界じゅうの華人も、「中国で失踪」と聞けばすぐに「臓器狩り」を連想してしまう、そんなイヤな世の中になってしまったのは事実だ。
謎の失踪
今月13日、民間航空会社に勤めるパイロットの孫さん(32歳)は、中国海南省海口市の橋で消息を絶った。
孫さんの家族と恋人は彼を懸命に探しており、失踪地付近の監視カメラ映像を調べようとしたら、「故障中」と告げられた。
SNSで猛拡散されているこの失踪ニュースは、中国メディアも取り上げ報道している。
中国メディアが、孫さんの恋人の話を引用して報じたところによると、その日の夜、孫さんは橋まで車を運転していき、車を道端に停めてハザードランプつけっぱなしで、失踪した。自殺傾向はないという。
「なぜ監視カメラは本当に必要な時には必ず故障するのか」に関する議論がネットで巻き起こり、「党性の強い監視カメラ」と皮肉が殺到している。
「監視カメラ」
中国では「社会の完全管理」を目標に、最先端技術を導入して、徹底した社会監視システムの整備が進んでいる。
中国警察は、「ターゲットを7分以内に逮捕できる!」と豪語する。それほどの「監視社会」であり、全国民の動きが「24時間見られている」状態である中国で、個人がその監視網から抜け出すのは不可能であるといってよい。
「中国は世界で最も安全だ」と誇る人たちがいる一方、中国全土で子供を含む多くの人が相次いで失踪しているのは、なぜか。
そして誠に皮肉なことに、街じゅうに設置された大量の監視カメラは、いざ当局にとって「不都合な事件」が起きるたびに、なぜか必ず「故障」するのだ。
この現象は過去に無数に起きていることから、ネット民はこれを「党性の強い監視カメラ」などと皮肉たっぷりに呼んでいる。つまり、党(中国共産党当局)にとって「不都合なものは一切映りませんよ」ということだ。
具体的には、例えば学校内で不可解な死を遂げた学生や生徒の遺族が、その監視カメラ映像の提供を求めても、学校側は「その時、カメラは故障していた。だから何も映っていない」として拒否するケースがほとんどなのだ。
真相隠蔽が当たり前の不条理
中共(中国共産党)政府は一貫してネガティブなニュースを隠蔽し、「今の中国の情勢は、すばらしい」という幻想を意図的に作り上げようとしている。そのため、どれほど国民の関心が高かろうが、「不都合なニュース」は検閲に遭い、ネット上から一掃されることが多い。
現地の警察も政府当局とグルになって証拠隠滅・真相隠蔽に躍起になるケースも多く、被害者遺族が真相を知ることは極めて困難である。
遺族だけではない、遺族のために声を上げるネット民も同様弾圧され、まるで何もなかったかのように、全てを隠滅して葬り去ろうとする。このパターン化された、恐るべき「事件処理方法」は、もはや中国の社会問題になっているといっても過言ではない。
華人であれば誰もが知る「臓器狩りを連想する」代表事件の1つに、「胡鑫宇(こきんう)事件」がある。「希少な血液型の保有者」といわれる江西省の高校1年生・胡鑫宇さんは2022年10月に理由もなく「失踪」し、翌年1月末に変死体で発見された。状況証拠に不審な点が多いにもかかわらず、警察当局によって「自殺」と断定された。
胡鑫宇さんの家族は遺体発見後から、どこかへ隔離されて、その安否もふくめて行方不明になっている。警察の管理下に置かれ、一切声を上げられないでいるという。
当初から、胡鑫宇さんは「狙いをつけられて、臓器狩り(臓器収奪)に遭ったのではないか」と疑われてきた。
この事件を早期に報じた動画配信者・李前偉(りぜんい)氏(浙江省、33歳)も2022年11月19日に車で帰宅途中に、原因も理由も分からない「謎の失踪」を遂げていた。
李氏の車はエンジンやハザードランプがついたまま、監視カメラの死角となる橋の下に停車されており、車内には彼のパソコンやリュックサック、身分証明証、銀行カードなどが残されていたが、彼が日常的に使う携帯電話はなかった。また、李氏の車のドライブレコーダーのデータは、人為的に破壊されていた。
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