標高575mの山頂付近から東広島の街並みが一望できる龍王山。その伏流水が10年から15年といわれる時間をかけて、ゆっくりと西条・酒蔵通りの地下の岩盤へとしみ込んでいく―――これが酒造りに適した「仕込み水」となっている。
「蔵造り通り」へと足を運べば、七つの蔵が仕込み水を試飲させてくれる。うちの一つである「黒松の井戸」を有する山陽鶴酒造株式会社は、名称があらわすように山陽道に面している。街道沿いに黒松の並木が見られた時代、黒松に舞いおりた鶴を見た創業者が、銘柄を「黒松山陽鶴」、井戸(試飲のできる)を「黒松の井戸」と名付けたという。売店に模様替えした店先の格子戸が、わずかに往時をしのばせている。
山陽道から路地伝いにすすんでいくと、蔵の一角に湧き水があることが目に留まる。筧(かけい)からこぼれる水を手にすくい一口含んでみると―――舌へのあたりがやわらかい。すっきりとした後味の中に、ほのかな甘みを感じさせてくれる。この水で醸し出される山陽鶴は、角が取れたバランスの良い酒に仕上がっているという。時を越え(創業100年)、今も人びとに愛され続けていることにはうなずけるものがある。
黒松の井戸所在地:広島県東広島市西条岡町6−9
山陽鶴酒造株式会社/売店:082-423-2055
交通案内:JR西条駅から徒歩5分
(文 豊山)
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