身体の痛みの原因は心にある=米精神科医
頭痛や腰痛など、慢性的な痛みに悩む人も多いはず。米誌フォーブスで「アメリカで最も優れた医師」にも選ばれたことのあるニューヨーク大学リハビリテーション医学教授のジョン E サーノ氏(John E. Sarno)によると、痛みに悩む人の原因は、その人の心の奥に抑圧された怒りや不安などの感情であり、本人がそれを突き止めれば回復していくという。
サーノ氏が発見したのは、ネガティブで暗い感情が慢性的な緊張を引き起こし、それが身体の痛みとして表出するという現象。これが緊張性筋炎症候群(TMS:Tension Myositis Syndrome)と呼ばれる症状であり、痛みは自分が直面したくない心のトラウマやプレッシャーなどから、目をそらす役割を果たしているという。
サーノ氏がこれを発見したきっかけは、ある女性患者との出会いだった。彼女は強烈な痛みのために寝たきりだったが、サーノ氏が彼女の精神分析をした結果、彼女が父親から性的虐待を受けた経験があることが分かった。心の傷に触れられたとたん、彼女は正気を失い、感情の激しい揺れがあったが、数分後には何年も苦しんでいた痛みから解放されたという。
米シアトルの著名な脊髄外科医、デービッド・ハンズコム氏(David Hanscom)も、痛みと心の密接な関係を指摘する。ハンズコム氏によれば、長期的な怒りや不安感はアドレナリンを体内に放出し、神経がより敏感になる。すると、腱炎やヘルニア、踵骨棘(しょうこっきょく、踵の痛み)など、それまで存在していたにも関わらず、感じなかった身体の異常な部分が、突然耐えられないほどの苦痛になるというのだ。
「不安や怒りがなくなれば、身体の化学反応がなくなり、リラックスして痛みもなくなる。痛みを緩和する必要もなく、痛み自体、完全に消失したという患者もいます」とハンズコム氏は話している。
依存症と痛みの原因は同じ
痛みと同じように、依存症に悩む患者も心に問題を抱えている場合が多い。サーノ氏に出会ってTMSを克服し、自身もクリニックを開くスティーブン・オザニック氏(Steven Ozanich )によると、依存症は抑圧された感情を覆い隠す役割を果たしているという。このような患者の場合、たとえドラッグやアルコールを断ち切っても、今度は身体のどこかに痛みが生じる。患者が本気で心の奥に隠しているネガティブな感情に向き合わない限り、痛みも依存症も消失しないという。
「人工的な方法、例えば手術や薬など、どんな方法で身体の症状をごまかしたとしても、脳を否定することはできないし、その問題は他の症状にシフトするだけなのです」とオザニック氏は話している。
(翻訳編集・郭丹丹)