大紀元評論・夏小強

習近平と李克強との関係 腹心か、それとも敵か(3)

この記事は、習近平と李克強との関係 腹心か、それとも敵か(1)と(2)のつづきです。

習近平李克強

李克強氏は、習近平氏と違い、「太子党」でもなく、「官二代」でもなく、輝かしい家庭背景がない。政界に入ってからも、その親族とともに利益集団を形成したことはない。

さらに、両氏の間では根本的な利益衝突がなく、李氏には習氏を脅かすような政治的な要因を見当たらない。両氏の間で「権力闘争を行っている」との報道は、基本的な政治の常識に合わないだけではなく、意図的に「観念」を生み出そうとしているように見て取れる。

江派閥が操るメディアが相次いで2人の権力闘争を報じた後、習近平陣営は反撃した。香港紙「明報」は昨年8月の評論記事で、権力闘争との報道は「全くの事実無根だ」と主張したのだ。

中共機関紙「人民日報」は昨年5月に、習氏のブレーンとみられる匿名の権威人士が「中国経済はL字型」だという認識について掲載した。しかし、その前に李克強氏は「前期は良好だ」「楽観している」などと示したため、両者の考えが全く違っていると一部のメディアが騒ぎ出した。

いっぽう明報は、「これは習氏と李氏の間で中国経済について見解が相違し、亀裂説を裏付けると伝えられているが、かならずしも習氏が国務院を管轄する李氏の実権を奪ったという結論に結び付くものではない」と報じた。

また「中共最高指導部も、メディアが相次いで両氏の対立を報道したことに神経をとがらせたため、国内メディアを通じて李克強首相に関する報道を増やした。目的は明白だ」「国務院は、政府が各政策を着実に実施していく法的執行機関だ。誰であっても勝手に国務院総理の実権を奪うことができない。さもなければ、政令を執行するために各レベルの政府機関と各部門を協調することが不可能となる」と主張した。

香港紙「経済日報」も昨年7月に掲載した評論記事では、「党内において、習氏と李氏はそれぞれの役割がある。……習氏は会社の会長ようなポジションで、会社の発展方向やその戦略を決める役割だ。李氏はその会社の最高執行責任者(COO)の役を担っており、日常の業務執行を統括している。立場が違えば、一仕事の認識も違うのは不思議なことではない」と指摘した。

李克強首相は経済の面から、習近平氏が江派閥に対して行う反腐敗キャンペーンの一翼を担っている。経済分野で、習氏の反腐敗および中国政治全体に関わる計画の進展に協調している李克強首相と王岐山氏は、習近平陣営の主力だ。

江沢民派閥の狙いは?

(Getty Images)

では、習近平政権と敵対する江沢民派閥が操るメディアは、なぜ習氏と李氏の対立が激しくなったと報道してきたのか?

江沢民が国家主席だった時代には、海外の多くのメディアを買収し、または海外でメディアを立ち上げた。これらのメディアは近年、江派の意図に沿って報道を続けてきた。この派閥の党内高層からの情報提供者により、スクープを生んだことは事実で、読者から信頼を寄せられた。

しかし、読者からの信頼を利用して、江沢民や江派閥に有利な「偽ニュース」も作ってきた。例えば、あるメディアは昨年「江沢民の警護レベルはこれまでの1級から2級に引き下げられた。……しかし、生活待遇は変わっておらず、この2年間江沢民には健康問題が起きたため、中央政府は病気治療のため海外から専門医を招へいすることを許可した」と報道した。

この報道を一見すると、江沢民への警護レベルが引き下げられて、待遇も前より悪くなったとの内容だった。よく見ると、実に江沢民が依然に健在で、習近平陣営に軟禁されていないとのアピールだった。

このように江派閥に操られているメディア、江派閥に都合のよいことを報道してきた。習氏と李氏の間で亀裂が生じたのを報じたのも、習陣営にトラブルを作り、習陣営の力を弱め、さらに習陣営が江派閥への打撃から目をそらすためだった。

現在、中国共産党最高指導部における、習近平氏、李克強、王岐山氏、兪正声氏をはじめとする習近平陣営と、張徳江、劉雲山、張高麗がはじめとする江沢民派閥との抗争が激しさを増している中で、習近平氏が軍権掌握に成功し、江派閥を念頭に『党内政治生活に関する規則』などと一連の規定を発布した。これらの動きは、すべて江派閥の一掃を強化し、今後江沢民を逮捕するための準備だ。

勢いが弱まりつつある江派閥は、絶えずあらゆる手段を使って抵抗している。それらのメディアを通じて、江派閥に有利な偽情報を発するのもその一つの手段だ。

(おわり)

(時事評論員・夏小強、翻訳編集・張哲)

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