獰猛だけど優しい面も

南極のアザラシがカメラマンに餌を運ぶ不思議な光景

ホッキョクグマペンギンなど極地の海に生きる動物たちを撮影する写真家のポール・ニックレン(Paul Nicklen)さんは、2006年に南極の海であった出来事が忘れられないという。彼によると、南極のギャングともいわれる獰猛な性質を持つヒョウアザラシが、4日間ほど彼に「を与えて、世話を焼いてくれた」というのだ。「ナショナル・ジオグラフィックに所属してから、最も感動的な経験だった」と話す。

巨大なアザラシを見かけた時、ニックレンさんは本能的にカメラをつかみ、すぐさま海に飛び込んだ。標的にしたアザラシはペンギンを口にくわえて、全速力で彼に向かってきた。その様子を見ていた別のカメラマンは危険を察知し、「全身が震え上がり、凍りついた」という。

次の瞬間、ニックレンさんに近づいたアザラシは急にペンギンを離し、大きく開いた口で彼のカメラにガブリ。しかし、数分後にアザラシはカメラを離すと、今度はペンギンを彼に押し付け始めた。彼の持っていたカメラがニックレンさんの口に見えたのかもしれない。それから4日間、アザラシは次々とペンギンを捕まえて、彼に食べさせようとしたという。

ペンギンをカメラマンに与えようとするアザラシ(スクリーンショット)

 

カメラマンのニックレンさんにぴったりと寄り添うアザラシ(スクリーンショット)

 

ニックレンさんにすっかり心を許しているよう。アザラシの表情は笑顔にも見える(スクリーンショット)

 

黒いカメラをニックレンさんの口だと勘違いして、餌のペンギンを押し入れようとするアザラシ(スクリーンショット)

極地の大自然の中で野生動物の写真を撮ってきたニックレンさんは、彼らの獰猛さをよく知っている。一方で、彼らにも人間と通じ合う心、弱いものを守る心を持っていることを、自ら経験したと話す。ニックレンさんはその後「TED」などで、彼が撮影した動物たちの写真を見せ、極地の環境保護と地球温暖化に関心を寄せるよう多くの人に呼びかけている。

(翻訳編集・豊山)