米環境保護庁 気候変動対策の法的根拠を見直し 複数州が法廷闘争へ

2026/02/13 更新: 2026/02/13

米環境保護庁(EPA)は12日、温室効果ガスが公衆衛生および福祉を脅かすとした2009年の「エンドンジャーメント・ファインディング(危急性の認定)」を正式に撤回した。連邦政府による気候変動対策の法的根拠を見直す措置であり、歴代政権が進めてきた排出規制政策の転換点となる。

2009年の認定は、バラク・オバマ政権下で制定された。二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスが現在および将来世代の健康を脅かすと結論付け、大気浄化法(Clean Air Act)に基づきEPAが自動車や発電所の排出を規制する法的基盤となってきた。

トランプ大統領とリー・ゼルディンEPA長官は、この認定を「事実や法律に基づかない」と位置づけ、撤回を決定した。トランプ大統領は、当該認定が自動車産業に負担を与え、消費者価格を押し上げたと主張している。

EPAによると、撤回に伴い以下の措置が実施される。

1)2012年以降のモデルイヤーを対象とした連邦温室効果ガス排出基準の廃止。

2)停車時にエンジンを自動停止させる「アイドリングストップ」機能に対する排出量規制の達成に有利となる優遇措置を終了する。

EPAは、規制緩和により納税者に総額1.3兆ドル超の経済的効果が見込まれ、新車購入費用を平均2400ドル以上削減できると試算している。ゼルディン長官は、議会が明示的に承認していない気候変動対策を行政機関が進めるべきではないとの立場を示し、最高裁のWest Virginia v. EPA判決などを引用して行政権限の範囲を説明した。

EPAの撤回決定に対し、科学者や環境団体からは反発が相次いでいる。多くの研究者は、2009年当時よりも現在のほうが気候変動が公衆衛生に及ぼす影響を示す証拠は強まっていると指摘する。

全米アカデミーズ(NAS)は昨年9月の報告書で、2009年の認定は妥当であり、その後の研究によって裏付けが強化されたとの見解を示した。オバマ元大統領は声明で、今回の措置が国民の安全や健康に影響を及ぼす可能性があると批判した。

天然資源防衛協議会(NRDC)やアースジャスティスなどの環境団体は、撤回は違法であるとして提訴の準備を進めている。

カリフォルニア州を含む複数州は、EPAの決定を巡り提訴の準備を進めている。コロンビア大学法科大学院のマイケル・ジェラード教授は、今回の措置が気候関連規制の枠組みに広範な影響を及ぼす可能性があると指摘する一方、過去に連邦裁判所が危急性認定を支持してきた経緯を踏まえ、司法判断が焦点になるとの見方を示している。

今回の決定は、自動車や発電所の排出規制にとどまらず、将来の政権による気候変動対策の再導入にも影響を及ぼす可能性がある。米国の環境政策は、再び大きな転換局面を迎えている。

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