中国人民銀 「対象限定」金利引き下げを発表、実質の金融緩和
中国人民銀行(中央銀行)は9月30日、国内の中小・零細企業、個人事業主向けの貸出残高が全体の貸出残高に占める比率を一定基準満たす市中銀行に対して、預金準備率を0.5%~1.5%引き下げると発表した。
専門家は、ほぼ全ての銀行が同業務を行っているため、すべての銀行が該当し、事実上「全面的な利下げ」だとの認識を示した。当局が来年経済情勢に関して悲観的な認識を反映した。
人民銀が30日に発表した声明によると、個別融資規模500万元(約8500万円)以下の中小企業、個人事業主、農業向けなどの貸出残高が全体の貸出残高、または融資の新規増加分に占める比率が1.5%の銀行について、預金準備率を0.5%引き下げる。また、同比率が10%に達している銀行については、預金準備率をさらに1%引き下げて、下げ幅を1.5%とする。
人民銀は中小企業支援の一環だとしている。同措置は2018年から実施する。
中国メディアの「華爾街見聞」(1日付)によると、国内の専門家らは人民銀の新政策で、金融市場に約7000億元(約11兆9000億円)~8000億元(約13兆6000億円)の資金が供給されることになると指摘した。ただ、人民銀は9月30日の発表文で「今回の措置は金融政策の方向転換を示すものではない」と強調した。
国内証券会社の長江証券でアナリストを務める趙偉氏は、「同政策で定められる対象銀行は、ほぼすべての大中商業銀行をカバーし、国内約90%の都市部商業銀行と95%の非県域農村商業銀行も対象になる。このため、対象限定の預金準備率引き下げと言っても、実質的に全面的な利下げとなるだろう」との見解を示した。
光大証券は、「『利下げ』は金融市場に与えるシグナルが強いため、人民銀は暗渡陳倉(あんとちんそう、相手を迷わせる)策で今回、金融緩和に踏み切った」と評した。
ロイター通信(2日付)は、「人民銀は金融緩和ではないように装いながら緩和を進めている」との見方を示した。
人民銀が「金融緩和ではない」とわざわざ強調したのは、いったん収まった人民元安が再燃する恐れもあるからだ。
また、供給された莫大な資金が今後不動産市場に流れ込む可能性が高いとみられる。今年に入り、当局は高騰する一方の不動産市場に対して、一連の抑制措置を打ち出したが、再び資金が流入すると、抑制措置の効果を打ち消してしまう恐れがある。
中国当局が債務削減や金融リスク解消を掲げながら、いっぽうで流動性を供給する。当局は抜本的な経済・金融改革を敢行する意欲が最初からなかったと言えるだろう。
(翻訳編集・張哲)