中国当局は、核・ミサイル開発を加速している北朝鮮金正恩政権に対して、忍耐力を失いつつあるようだ。北京大学国際関係学院の賈慶国・院長は9月11日、オーストラリア国立大学の学術サイト「東アジア・フォーラム」で『北朝鮮での最悪な状況に備えるべき時期になった(Time to prepare for the worst in North Korea)」と題する論文を発表した。専門家は、中国当局が北朝鮮との同盟関係解消を意識し始めた可能性があると分析した。
賈院長は同論文で、中国当局は金政権の崩壊に備えて、米韓と一日も早く対応策を議論するべきだと提案した。「戦争が現実となった時、中国は準備をしなければならない。この状況下で、中国(当局)は関係国と不測事態について積極的に対応策を話し合うべきだ」とした。
また「金政権崩壊後、誰が北朝鮮の核武器を管理するかについて、北京(中国当局)は米国と議論する必要がある」と賈院長は主張した。
有事の際、北朝鮮からの難民流入問題について、中国当局は軍を派遣し、北朝鮮で「セフティーゾーン」を設立することができると、賈氏は提案した。
中国当局は北朝鮮問題において、米朝による対話の実現を目標としている。当局は国内で、北朝鮮金政権崩壊論に関する言論を封じ込んできた。
AFP通信社によると、専門家の多くは、中国当局の許可がなければ、賈院長の論文は海外で発表できないとみている。また、専門家は中国当局が金政権崩壊論を容認したのは、中国共産党指導部の内部で北朝鮮との同盟関係を徹底的に見直す動きがあるからだと推測した。
中国と北朝鮮は1950年代の朝鮮戦争以降、固い軍事同盟を結んできた。しかし、今年に入ってから金正恩政権が相次いでミサイル発射や核実験を行い、中国当局も国連安全保障理事会(安保理)の制裁決議に賛同するようになった。
欧米政府外交官の1人はAFP通信に対して、中国当局の北朝鮮崩壊論を黙認したのは11月トランプ米大統領訪中に向けて、大統領の機嫌を取るためのパフォーマンスだとの見方を示した。
一方、上海市にある復旦大学中国研究院の王鵬・研究員は中国を含む国際社会が団結して、北朝鮮に対して軍事行動を起こすとの姿勢を示せば、金政権が核兵器の実戦配備を放棄するかもしれないとの認識を示したという。
AFP通信によると、中国の知識人の多くは現在、北朝鮮との同盟関係解消が中国にとって有利だと認識している。また、朝鮮半島の統一は、中国東北地方の経済発展にプラスだと考えているという。
中国当局はこれまで、中国が北朝鮮金政権を見限るべきだとの論調を許さなかった。中国共産党中央党校機関紙の副編集長を務めた鄧聿文氏が2013年に英紙・フィナンシャルタイムズで、中国当局が北朝鮮との同盟関係を解消すべきだとの評論記事を発表した。その後、鄧氏が免職処分を受けたと報じられた。
今年4月に鄧氏が、中国民間国際関係シンクタンク「察哈爾学会」で中朝関係について評論記事を発表した。鄧氏は「南北統一が実現すれば、米軍は韓国に駐留する必要がなくなる」「また韓国政府が、高高度ミサイル防衛システム(THAAD)を配備する必要もなくなるだろう」との考えを示した。
今回鄧氏の評論に対して、中国当局からの言論統制の動きはまだみられていない。
(翻訳編集・張哲)