習近平政権2期目のスタートを切る直前に、政局の行方に対する予告とも読み取れる中規委の文章は憶測を呼んでいる。(Nicolas Asouri/Pool/Getty Images)

中国反腐敗当局が「変革」記事を掲載 行間に含まれたメッセージとは

18日の中国共産党第19回全国代表大会(19大)を控えるなか、党中央規律検査委員会は7日、「変革:革故履新 守正出新」を題とする文章を公式ウェブサイトに掲載した。習近平政権2期目のスタートを切る直前に、政局の行方に対する予告とも読み取れる同文章は憶測を呼んでいる。

タイトルにある「革故履新」は唐の時代の言葉で、「古いものを捨てて新たな段階に入る」という意味。老子の「道徳経」に由来する「守正出新」は「正しいものを守り、新しいものを生み出す」ことを表す。まとめれば、「過去を否定し、新たな変革へと邁進する」と解釈することができる。サブタイトルに「行間を読む」を意味する言葉「字里行間」が付けられている。

わずか800字あまりの文章は「変」と「革」の解説に終始した。解説は儒教の重要経典である「易経」と「礼記」に基づいて行われた。

まず易経の言葉が引用された。「四季・昼夜の変化、太陽・月・星など、万物の成長・輪廻はみな天と地が按配したもの」「極まれば変化する、変化すれば道が開ける、道が開ければまた長く続く」「事物の発展が阻まれて停滞する場合、引き続き前進するには、必ず変わらなければならない」

「変革は天と人の意向に順応しなければ成功しない」という易経の言葉を借りて、「変革は客観な規律、社会と国の事情、人民の意志に沿わなければならない」と諭した。

易経は3500年前に完成された東洋最古の書物とされる。万事万物が自然の摂理に従って動いていると説き、哲学書でも占術のテキストでもある。「天も地も改造できる」という共産党思想とは相容れない考え方で、共産党に長らく、封建迷信だと批判されてきた。

また、天下を治めるための変革の方法について、古代中国の倫理規範に関する最も重要な経典の一つ「礼記」を引用した。「度量衡(最高権力)、礼法(礼儀&法律)、称号は時代に合わせて変えるべきだが、親族・年上の者を愛護・尊重する人倫道徳の規範は、随意に変えてはならない」を紹介した。「礼記」は周から漢にかけて儒学者が解説した、礼の倫理的意義について、古説を集めたもの。

この文章の掲載について、大紀元コラムリストの周暁輝氏は「19大後、共産党思想に束縛されない政治変革を行うと示唆するもの」「今後の変革は、最高権力者の称号の変更や関連の法律の改正に及ぶ可能性がある。習氏は(いまの中国で衰退した)人倫道徳の再建に意欲的だ」と分析した。

習氏はこれまでも中国の伝統の重要性を説いてきた。2016年3月、文学者や芸術家らが参加する会議で、「中華民族が今日まで代々続いてきたのは中国の伝統思想による支えがあったからだ」と発言した。

また、2012年の18大で最高指導者となった習近平氏はこの5年間、腐敗幹部の取締りを通じて、権力を一手に収めた。「一強」となった習氏は民主主義国家の大統領制に移行するのではないかとささやかれている。

                                             (翻訳編集・叶清/李沐恩)

 

 

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