今年に入り、習近平主席は、中国共産党中央政治局常務委員会制度(常委制)を終了し、「大統領制」に移行するのではないかと噂されるようになった。党内の専門家も、大統領制について言及している。しかし、中国共産党の一党独裁を基盤から揺るがす「大統領制」を実現させまいと、党の権力にしがみつく江沢民派は、これに反対する立場を示している。
江沢民派で党内ナンバー3の張徳江・常務委員は5月、中国共産党中央党学校で「大統領制」への移行に対し反対の意見を表明した。同じく江沢民派でナンバー5の劉雲山・常務委員は、言論統制を強めることで、習近平氏に対抗しようとする。
習近平氏のお墨付き? 党の専門家、「大統領制」にふれる
中国国家行政院教授の汪玉凱氏は今年3月に行われた記者会見で、初めて、中国は「国家主席制」から「大統領制」へ変えられると述べた。しかし、現行の中国の政治制度は共産党の一党独裁であり、大統領制とはなじまないため、今の政治制度を全面的に変更しなければならない。
今年7月、汪玉凱氏は再び大統領制について言及。大胆にも、「大統領制に変更する前に先に常委制を終了する必要がある」と述べた。
汪玉凱氏の発言は中国のみならず、香港や海外の新聞にも掲載された。中国の政治風土を考慮すれば、習近平氏の許可がなければ言及することはできない。そのため、汪玉凱氏の「大統領制」発言は、習氏が認めている可能性が高い。
北戴河会議で常委制の廃止を検討か
中国共産党指導部の年一回の北戴河会議は今年7、8月に行われる予定だ。5月に刊行された香港の雑誌「アジア・ウィーク」によると、今年の北戴河会議で習近平当局は3つの問題を議論するという。▼常委制の廃止 ▼「七上八下」という中央政治局のルール(会議のときに67歳以下の人は留任し、68歳以上の人は引退する) ▼中国共産党の次の指導層の人事、の3つ。
中国共産党指導部と係わる人物によると、もし習近平氏が今年の北戴河会議でだい派閥からの意見を退け、自分の意向で人事を決定できれば、今年秋の第六回中央委員会会議や来年の第十九回中国共産党全国代表大会で、「想定外」の決定が下るかもしれないという。
全人代の権威を借り、習近平氏に牙をむく
中国を率いる党中央政治局常務委員7人「チャイナセブン」のナンバー3で、全国人民代表大会委員長の張徳江氏は5月23日、中国共産党中央党学校で、全土の党代表が出席する全国人民代表大会(全人代、国会に相当)について言及した。「全人代は国家主席を監視することができる」と主張し、習近平氏をけん制したのだ。
また、党が「民主的な制度」を実践するためには全人代が不可欠と述べたが、その意図は、党内で多数派である江沢民派の力を利用して、習氏から主導権を奪うためのものだ。
張徳江氏は、表向きには全人代制度を守ることを主張しているが、実際に彼は大統領制に反対であることは香港の雑誌「動向」が2016年6月に発表した記事でも、指摘されている。
江沢民派による習近平氏に対する挑戦は、2014年9月から始まった。張徳江氏の部下であり、人民代表大会に属する李慎明氏は、「人民代表大会が国家主席を罷免することができる」と公言し、習近平氏を挑発した。
メディアを通じた習近平氏の反撃
中国の政府系メディア「人民日報」は6月16日、「中国共産党の中央の主要な指導機構の歴史」という記事を発表した。それによると、中国共産党は1934年から1956年までの22年間は中央政治局常務委員会がなく、中央書記処が実質的な指導機関だったと伝えた。この記事は、常委制が必須ではないことを示し、習近平氏の意向に基づいた、張徳江氏に対する反撃と言える。
(つづく)
(翻訳編集・揚思/文亮)
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