「犬を飼う人は犬好き」というわけでもなさそうだ。中には、虐待を繰り返す飼い主もいる。
2015年末、エジプトにいた子犬のルーシー(犬種・ピットブル)は日常的に暴力を振るわれていた。同じビルでドッグ・シェルターを営むスタッフがみかねてルーシーを引き取ろうとしたが、飼い主は拒否。ルーシーはアゴの骨二カ所を折るほどの暴力を受け、命の危険にさらされていた。
ルーシーの救助を更に難しくしたのは、飼い主がビルのオーナーだったこと。彼の機嫌を損ねれば、ドッグ・シェルターのスタッフたちも出ていかなければならない。そこで、彼らは米国で犬の保護活動を続けるSNARR (Special Needs Animal Rescue & Rehabilitation)へ連絡し、ルーシーをこっそりと米国行きの飛行機に乗せた。エジプトの飼い主には、「ルーシーは死んだ」と嘘をついたという。
SNARRの代表を務めるローレン・コネリー氏によると、ルーシーはアゴの傷が感染し、そこから放つ臭いが強烈だったという。ルーシーを診た獣医師は、「飼い主から強く蹴られたか、あるいはレンガのようなもので殴られた可能性がある」と言ったと話す。傷が癒えるまで、ルーシーはスープ状のドッグフードを与えられて命をつないだ。
その後、スタッフたちの懸命な看病によりアゴが完全に回復したルーシー。1歳になった彼女は新しい家族に引き取られ、幸せに暮らしている。
(文・郭丹丹)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。