アングル:北京の幼稚園で児童に性的虐待か、針で刺し薬使用も
Philip Wen Adam Jourdan
[北京/上海 26日 ロイター] – 中国の就学前教育大手RYBエデュケーション(紅黄藍)<RYB.N>が運営する北京市朝陽区の私立幼稚園で、園児が針で刺されたり、性的虐待を受けていた疑惑が浮上した。急成長する同国の児童保育産業における新たな虐待スキャンダルは、市民の大きな怒りを呼んでいる。
国営新華社通信が23日、この児童虐待疑惑を報じたことを受け、地元警察当局は、同園児童に対して「性的虐待を行ったり、針で刺したり、成分不明の錠剤を飲ませた疑い」について捜査すると表明。25日にはサイトで、河北省出身でLiuという姓の同園で働く女性教師(22)を拘束したと発表した。
また、北京出身でLiuという姓の31歳の別の女を、この件で偽情報を拡散し、社会秩序を乱したとして23日に逮捕したと述べた。
新たな児童虐待事件に対する保護者や市民からの怒りが高まるなか、ニューヨーク証券取引所に上場するRYBエデュケーションの株価は24日、38.4%急落。同社は26日、この幼稚園の園長を解任し、当局に拘束された教師を解雇したと発表した。
地元メディア報道によると、同園児童の保護者は、裸の子どもたちに対して、成人の男が裸で「健康診断」を行う問題行動について、子どもたちから聞いたと語った。一番幼い子どもは3歳だったという。
園側に説明を求めるため23日に幼稚園の前に集まっていた親たちも、成分不明の錠剤を飲まされたり、裸で教室に立たされる罰を与えられるなど、子どもたちから一致する証言が出ていると話したという。
中国では、相次いで発覚する児童虐待事件によって、保育や初期教育産業に対する当局の手ぬるい規制や監督を巡る問題が表面化しており、幼稚園などに通う子どもたちに対する安全確保に大きな関心が集まっている。
RYBエデュケーションは24日、公式のマイクロブログで「今回の件で保護者の皆様や社会に大きな心配をかけたことを深くお詫びする」との声明を出し、園内に設置した監視装置を提出するなど当局の捜査に協力していると述べた。
<特別調査>
中国教育部は23日、同園運営に対する特別調査に着手。全土の教育当局に、「こうした事例を警告ととらえるよう」指示した。
これまでも中国では、子どもたちが叩かれたり、棒で殴られたり、口を粘着テープで閉じられたりする事件がオンラインで拡散され、市民の怒りを呼んでいた。
今回の事件についても、ソーシャルメディア上では、大きな怒りの渦が巻き起こっており、テンセント・ホールディングス<0700.HK>のチャットアプリ「ウィーチャット(微信)」では、「RYBエデュケーション」が23日だけで7600万回もつぶやかれた。
「これらの事件は個別の案件かも知れないが、それが映し出すより深い問題を見過ごしてはならない。そのための法律を執行し、監督を強化し、教師の給料を上げる必要がある。保育産業が、非文明的な形で成長することは許されない」と、新華社は論評した。
<成長分野>
中国の教育事業者は大きな投資を呼び込んでおり、一部の企業はグローバル市場に上場するなど、より高度な教育サービスを求めて急拡大する親世代からの需要の追い風を受けている。
24日の急落前には、RYBエデュケーション株はニューヨーク市場に9月上場して以来44%上昇しており、時価総額は一時約7億6600万ドル(約854億円)に達していた。
RYBエデュケーションが手掛ける教育施設で児童虐待疑惑が表面化したのは今回が初めてではない。
吉林省の裁判所は2015年、四平市にあるRYBエデュケーションが運営する幼稚園の1つで児童を身体的に虐待したとして教師2人に有罪判決を言い渡した。判決によると、この幼稚園では、スタッフが「複数回にわたり、針や脅しの手法を使い、担当する子どもたちの多くを虐待」していたという。
RYBエデュケーションは今年初めも、教師が子どもたちを叩いたり押したりしている映像が表面化。北京で同社が運営する別の幼稚園で「深刻な過ち」が発覚したとして、園長に辞任を求めていた。
国営テレビは23日、北京の幼稚園の周りに集まり、説明を求める親たちや警察官の映像を放送した。
24日に幼稚園を訪れた父親は、子どもの入園を取り消し、返金を求めに来たと話した。
Wang Siqiさん(36)は、6歳になる息子はこの幼稚園に通っていないにもかかわらず、会社を休んで説明を求めにきたという。
「母親として、こんなニュースは我慢できなかった。許されないことだ」
RYBエデュケーションのサイトによると、同社は中国の300に上る都市で、6歳までの子ども向けの幼稚園約500園を運営し、子どものための学習教室1300カ所以上を直接所有、またはフランチャイズ経営している。
(翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)