写真は米ニューヨーク証券取引所。(Spencer Platt/Getty Images)

中国企業、次々と米株市場上場も株価低迷、業績の水増しなど信用問題で

今年約16社の中国企業が米証券当局の審査を経て、ニューヨーク証券取引所(NYSE)などに新規株式上場(IPO)を果たした。しかし、16社のうちの10社の株価はIPO初日の発行価格より5.7%下落した。中には、下落幅が2桁となった銘柄もあった。目先の利益を追求する経営手法をとる中国企業に対して、米投資家は証券当局よりも厳しい目を向けている、と専門家は分析する。

米紙・ウォールストリート・ジャーナルはこのほど、中国企業16社が今年、米国のNYSEと新興企業向けのナスダック市場(NASDAQ)でIPOを果たし、年間件数として、過去10年間で最多と報道した。

しかし、16社のうちの大半はIPO当日の発行価格より大幅に下落しているという。10月18日に、NYSEに上場を果たした中国電子商取引最大手アリババ集団傘下ネット金融企業「趣店」の今月15日の終値は、IPO初日の発行価格より46%安と大幅に下落。趣店はIPO初日で100億ドル以上の資金を調達した。

また、同じネット金融企業の「拍拍貸」も11月10日にNYSEに上場した。同銘柄の今月14日の終値は1カ月前上場初日の発行価格より38%安と、大きく落ち込んだ。

大紀元のコメンテーターで時事評論家の傑森氏は、中国企業の相次ぐ米株式市場での上場は、事業拡大のための資金調達が目的ではないと指摘した。「中国企業が、米市場で集めた資金を独り占めするため、いわばひと儲けしようと米株市場での上場を目指したのだ」このため、株価の状況を判断する指標である株価収益率(PER)が50倍と非常に割高水準にある中国企業も現れた。

中国国内では、長期的戦略を立てて事業展開し、実際の財務報告書に基づいて会社の業績を説明する企業は少ない。多くは、株式市場を通じて投資家からより多くの資金を集める目的で、自社株価をさらに上昇させるために、業績を水増している。さらに、マスコミやインターネットなどを通じて大々的に宣伝して企業の評判を上げようとしている。

「今や、このやり方を海外の株式市場まで持ってきている」と傑森氏が批判した。2011年、米空売り専門投資会社マディ・ウォーターズ・キャピタルは、カナダ市場に上場した中国林業企業、嘉漢林業国際(シノ・フォレスト)が資産と業績を大幅に水増ししたとの調査報告を発表した。今年7月、カナダ証券当局は、同社4人の幹部に対して、詐欺行為があったと認定した。

この事件をきっかけに、数年前まで中国経済を楽観視していた北米の投資家は中国企業に対して警戒しはじめている。

また、中国北京市の紅黄藍幼稚園で園児虐待問題が発覚した日、米株市場に上場した運営会社の北京紅黄藍児童教区科技発展有限公司の株価は4割も急落した。

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海外投資家は、米市場に上場した中国企業の信用リスクに関して再認識した。その結果、「趣店」などの銘柄の相場の下落につながったとみられる。

傑森氏は、今後国内外の株市場に上場するすべての中国企業にとって、「着実に事業を経営していくことが課題となっていくだろう。でなければ、企業としての価値がなくなるばかりではなく、企業の寿命も短くなる」と指摘した。

(記者・高亦清、翻訳編集・張哲)

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